※画像はイメージです。

DP(ダイナミックプライシング)とは

ダイナミックプライシング(Dynamic Pricing、以下DP)とは、販売状況や季節要因によって変わる需要と供給の状況に合わせて、商品やサービスの価格を柔軟に変動させる価格戦略のことです。市況や天候、時期、販売状況などのビッグデータに基づいて、その時々の需給に合った適切な価格を算出し、繁忙期には価格を上げ、閑散期には値下げを行います。主に航空機のチケットやホテル・旅館などの収益の最大化や、機会損失を防ぐために用いられています。代表的な例としては航空業界では、運航の稼働率向上を目的として、搭乗日までの早めの予約に対して価格を割安に設定します。近年DPはテーマパークやホテル、スポーツ観戦、交通機関などの様々な事業で活用される範囲が広がっています。

(注)図はイメージ図
(出所)各種資料より野村證券投資情報部作成

DPの活用事例の特徴

DPは古くよりホテルや運輸業など、部屋数や座席数などに明確なキャパシティーが存在し、コストに占める固定費の比率が高く、稼働率の向上や維持の優先度が高い業種で多く行われてきました。近年では、テーマパークやUber等のような宅配ビジネス、事業を行うにあたってのキャパシティーが明確ではない企業では、ピーク時等の需要が強い場合には値上げを行う等、需要に応じて価格をコントロールし、顧客満足度の向上と収益の最大化を図っています。

(注)全てを網羅しているわけではない。
(出所)各種資料より野村證券投資情報部作成

今後の価格戦略の動き

人手不足やインフレ圧力の上昇などを一過性の現象と考える企業は減少しており、DPを活用した価格戦略の強化が期待されます。また、これらに必要とされる緻密な需要予測と、適切な価格設定を自ら行うのが困難な企業に対して、ビッグデータ等を用いた価格戦略のノウハウを提供する企業も出現しています。今後は、こうした企業のDPを用いた価格戦略により、稼働率の上昇や収益最大化が期待されます。

ご参考:ダイナミックプライシング関連銘柄の一例

顧客満足度の極大化

  • コカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングス(2579)
    夜間に飲料水「い・ろ・は・す」の値段を130円から120円へ値下げする自動販売機を導入した。今後は季節要因や立地による価格設定も検討する。
  • オリエンタルランド(4661)
    2021年3月より、ディズニーランド及びディズニーシーにて入場チケットに変動価格制を取り入れ、ゲスト一人当たり単価の上昇効果が見られる。
  • サンリオ(8136)
    2022年4月より「サンリオピューロランド」入場チケットに変動価格制を導入した。混雑期と閑散期の来場者数を平準化し、さらなる価値向上に努める。

明確なキャパシティーがある業種

  • 東日本旅客鉄道(9020)
    2023年3月よりオフピーク定期券を導入し、電車のピーク時以外の運賃を、通常の定期券よりも引き下げた。
  • 日本航空(9201)
    搭乗日までの日数や予測残席数により、運賃の価格帯を3種類に設定している。国内の大手旅行サイトと提携をすすめている。
  • ANAホールディングス(9202)
    搭乗日までの日数や予測残席数により、運賃が変動する運賃体系を設定している。国内の大手旅行サイトと提携をすすめている。
  • エイチ・アイ・エス(9603)
    国内旅行を中心に、早期予約(出発から60日前)や長期滞在者に向けて特典付きのパッケージを開発した。

プライシングを提供するテック企業

  • 東芝テック(6588)
    プライシングに特化したコンサルティング会社のハルモニア株式会社へ出資を行い、ダイナミックプライシングの普及につとめる。
  • 日本電気(6701)
    「NEHOPS」というホテル向けのDPシステムを提供している。AIによる客室価格の分析・算出等、ホテルの業務効率向上やITソリューションを展開している。

((注)全てを網羅しているわけではない。
(出所)各種資料より野村證券投資情報部作成

(野村證券投資情報部 新垣 雄)

ご投資にあたっての注意点