※執筆時点 日本時間12日(金)12:00

先週:「CPIショック」でもナスダックは最高値更新

米国株式は3月米CPI(消費者物価指数)を受けて調整しましたが、企業業績拡大への期待もあり、ナスダック総合指数は終値での史上最高値を更新しました。

CPIショック

米国時間10日(水)寄り前に、3月CPI(消費者物価指数)が発表されました。総合指数が前月比+0.4%(市場予想は同+0.3%)、変動の大きいエネルギー・食品を除くコアCPIが同+0.4%(市場予想は同+0.3%)と、いずれも市場予想を上回りました。住居費や輸送サービス(主に自動車保険)などサービス価格が上昇に寄与しました。

CPI(消費者物価指数)~前月比の推移

(注)コア指数はエネルギー・食品を除く。直近値は2024年3月。
(出所)労働省、LSEG(旧リフィニティブ)より野村證券投資情報部作成

5日(金)に発表された3月雇用統計では平均時給の伸び率が、2月の前年同月比+4.3%から同+4.1%へと鈍化していたことからインフレ警戒感がやや薄れていましたが、CPIを受け市場には利下げ開始時期が遠のいたとの見方が広がり、米金利は上昇し株価は下落しました。

数週間以内に消化可能

コロナ禍からの回復過程において生じたインフレに対してFRB(米連邦準備理事会)は「一時的」なものだと楽観視していましたが、その後も期待を裏切ってインフレ率が上昇基調を辿ったことを受けて、FRBは近年例を見ないペースで利上げを実施しました。CPIが3ヶ月連続で市場予想を上回ったことから、3月CPIの発表を受けて市場の利下げ観測は大幅に後退しました。ただし、年初来の米国市場を俯瞰してみると、米10年国債利回りが上昇(2023年末 3.88%→4月11日4.59%)している一方で、S&P500指数は短期的に下落する場面をはさみながらも上昇(2023年末4,769→4月11日5,199)しています。野村證券の試算によれば「CPI上振れショックの際の株式市場ではS&P500は10営業日(2週間)ほど、TOPIXも20営業日(1か月)ほど、それぞれ軟調な展開となった後に切り返す傾向が確認できる」としています。

なお、CPI発表翌日11日(水)寄り前に発表された3月米PPI(生産者物価指数)では、総合指数が同+2.1%(市場予想は同+2.2%)、エネルギー・食品を除くコア指数が同+2.4%(市場予想は同+2.3%)と大きな上振れはなかったことから、市場は落ち着きを取り戻しています。インフレ指標に一喜一憂する場面は続きますが、過度に懸念することなく冷静に次の指標・企業業績を確認していく場面と考えられます。

今週のポイントは2点です。

①ブラックアウト前、高官発言に注目

FRBは20日(土)からFOMC(米連邦公開市場委員会)前のブラックアウト(公に金融政策に関する発言を自粛する)期間に入ります。CPIやPPIの内容を受けたFRB高官の発言が注目されます。

そのほか、経済指標では15日(月)に4月NY連銀製造業景気指数、3月小売売上高、16日(火)に3月住宅着工・建設許可件数、3月鉱工業生産、18日(木)に4月フィラデルフィア連銀製造業景気指数、3月中古住宅販売件数など注目度の高い指標が発表されます。

1-3月期決算発表がスタート

米企業の2024年1₋3月期決算発表で業績が堅調さを示し、2024年4-6月期以降の増益基調の見通しが確認できれば、株式市場では今後の米国企業の業績拡大を織り込み、上昇基調に復帰すると予想されます。来週から本格化する2024年1-3月期決算発表に市場の注目が集まります。既に発表が始まっている金融セクターに加え、17日(水)に予定される半導体製造装置大手のASMLホールディング※、18日(木)に予定されるメディア大手のネットフリックスの決算発表が市場の関心を集めています。

※ASMLはオランダ企業だが、ADR(米国預託証券)を米国上場している

ASMLの前回の決算発表(2023年10-12月期)では実績は市場予想を上回ったものの、会社は2024年12月期が「移行の年になる」として、売上高は前期比横ばい、粗利益率は若干低下すると保守的な見通しを示していました。一方で受注は大幅に増加しており、メモリー半導体メーカーからの受注が前四半期比730%増、前年同期比107%増となりました。ロジック(演算)半導体だけでなく、メモリー半導体においてもAI用データセンターからの引き合いが強く、ASMLが得意とする最先端露光装置であるEUVへの需要が高い環境が続いているようです。ASMLのメモリー半導体に対する需要急増の動きは、同じくマイクロン・テクノロジーの2023年12月-2024年2月期決算や、サムスン電子の2024年1-3月期決算速報値が好調であったこととも整合的です。ASMLが今期の業績見通しをどのように示すかに市場の注目が集まります。

ネットフリックスの前回の決算(2023年10-12月期)では、全世界の有料会員純増数が1,310万と市場予想(900万)を大幅に上回ったことが好感されました。アカウント共有(追加で数ドルを支払うと同居者以外にもアカウントを共有できるオプション)の契約者が想定以上に増えたとみられます。ただし、今後は有料会員数純増ばかりが注目されることはなくなっていくとみられます。当社は、主要な市場である北米で、広告なしの最も安いプランであったベーシックプラン(端末1台でしか見られない)の新規受注を停止し、広告付きプランか、ベーシックプランの一つ上のプランとなるスタンダードプラン(端末複数台で見られる)へと移行を進めています。この施策は、一契約当たりの売上高(広告料を含む)を上昇させる一方、有料会員純増数を低下させるものです。このため、市場の関心は会員数(数量)から契約プランの内訳(単価)を含む会社全体の収益向上へと移っていくでしょう。2024年のメディア・娯楽セクターは、家計の消費余力が圧迫される中で成長が続けられるかに注目が集まりそうです。

(野村證券投資情報部 小野崎 通昭)

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