(注)画像はイメージです。
本日の動き
本日の日経平均株価は前週末比466円安の39,056円で取引を開始しました。前週末の米国株式市場で主要3指数が揃って下落したことに加え、週末に中東情勢が悪化したことが、株式市場の重石となりました。寄り付き後下げ幅が一時、前週末比702円安まで拡大する場面もありました。もっとも、その後は米主要株価指数先物が堅調に推移していることや、為替市場で円安ドル高が進行したことなどから、日経平均株価は下げ渋る展開となりました。後場に入ると、39,100円を挟んで横ばいとなり、前週末比290円安の39,232円と反落して、取引を終えました。
業種別では、原子力規制委員会が停止中の柏崎刈羽原発への核燃料搬入の作業を承認したと報じられたことで、東京電力をはじめとした電力株が堅調に推移し、電気・ガス業が前週末比+3.11%となりました。一方で、ファーストリテイリングやソフトバンクグループ、アドバンテストや東京エレクトロンといった値嵩株や半導体関連株の一角が下落し、4銘柄で日経平均株価を約126円押し下げたほか、前週末引け後に業績の大幅下方修正を発表したアステラス製薬が前週末比-7.95%と大幅に下落しました。
(野村證券投資情報部 磯崎 博志)
中東情勢の争点はイスラエルによる反撃の有無
2024年4月1日、イスラエル軍がシリアの首都ダマスカスにあるイラン大使館を空爆しました。金融市場ではイランの報復に注目が集まっていましたが、4月13日にイランは自国の領土からイスラエルへ向けて報復攻撃を行いました。イランはイスラエル本土をドローンで攻撃し、イスラエルの占領地であるゴラン高原(シリア領)には弾道ミサイルで攻撃を行いました。
イランとしては、本土外とはいえ領土に相応する大使館を攻撃されたため、イスラエルへの報復が必要だったと見られます。レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラなどの周辺の親イラン勢力に代理攻撃をさせずに、イランの正規軍が自国領土から攻撃を行ったという意味では強硬な対応を示せたと言えます。イスラエル本土への攻撃には、飛行速度が遅くイスラエルにとって迎撃が容易なドローンを用い、結果的にイスラエル側の被害を限定的にしたのは、イランが報復をアピールしつつも、イスラエルとの全面戦争を避けようとしていたからだと考えられます。イランの国連代表部は、今回の大規模攻撃について「この問題は完了したとみなしうる」と表明しました。
問題はイスラエルが反撃を行うかどうかということでしょう。仮にイスラエルの反撃のリスクが残る場合、金融市場は株安・債券利回りの低下、原油高の反応を示すでしょう。イスラエルのネタニヤフ政権は国内の政治基盤が不安定です。パレスチナのイスラム教組織ハマスやヒズボラなど非政府組織との戦闘ではなく、イランを全面戦争に引き込めば、政権は延命するでしょう。
しかし、イランとの全面戦争は、米国の安全保障協力があるからこそ可能な戦争です。米国はイランのドローン、弾道ミサイル迎撃を支援しましたが、更なる事態の悪化を望んでいません。4月13日の攻撃直後、バイデン大統領はネタニヤフ首相と電話会談を行い、米大統領府からは「バイデン大統領はイランとの戦争を望んでいないことをはっきりと表明してきており、アメリカはこの地域の緊張をさらに高めることも望んでいない」との表明がありました。米国がイスラエルの反撃を許容するとすれば、イランが追加攻撃を行った場合であり、石油施設や民間居住地を避け、ミサイルやドローンの発射基地など軍事施設や核施設を対象にした限定攻撃を求めると考えられます。
バイデン政権は、11月に大統領選挙・議会選挙を控えています。ドライビング・シーズン(夏季休暇に伴うガソリンの需要期)の前にガソリン価格が高騰すれば、政権批判が高まり、バイデン大統領の再選や民主党の議会選挙に不利となります。また、戦費や米国人の犠牲を伴う米国の参戦という決断を選挙直前に迫られることをバイデン大統領は避けたいというのが実情でしょう。
(要約編集:野村證券投資情報部 デジタル・コンテンツ課)
要約編集元アナリストレポート
政治レポート – 中東情勢:イランの対イスラエル報復攻撃と今後の見通し(2024年4月15日配信)
(注)各種データや見通しは、要約編集元アナリストレポートの配信日時点に基づいています。
(出所)野村證券市場戦略リサーチ部などより野村證券投資情報部作成
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(注)データは15時15分頃。ドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。
(出所)Quickより野村證券投資情報部作成