5月FOMCでは政策金利を据え置き、バランスシート縮小ペースは減速へ

FRB(米連邦準備理事会)は4月30日~5月1日にFOMC(米連邦公開市場委員会)を開催し、予想通り全会一致で金融政策の据え置きを決定しました。政策の据え置きは6会合連続です。FRBはまた、米国債のランオフ(償還に伴う保有証券減少)のペースを現在の月間最大600億ドル相当から、6月からは250億ドル相当へ減額する計画を提示しました。

FOMC声明文では「ここ数カ月、委員会が目指す2%のインフレ目標に向けた一段の進展は見られていない」との記述が追加され、パウエルFRB議長も会合後の記者会見で「インフレに関する指標は予想を上回っている。確信を強めるまで、従来の想定よりも時間がかかりそうだ」と述べるなど利下げを急がない姿勢を示しました。一方で、次の一手が利上げとなる可能性は低いとの見解を明らかにしました。

一時1ドル=153円台に急騰、為替介入との見方も

市場ではFRBのタカ派化(景気よりもインフレ抑制を重視する姿勢)に対する警戒感が高まっていたことから、FRB内で利上げ議論が高まっていないことが好感され、株高と金利低下で反応しました。先物市場では再び2024年11月の利下げを織り込む動きが強まっています。また、為替市場では取引時間の終盤にドル円相場が一時1ドル=153円04銭まで急騰、4月29日に一時160円17銭と約34年ぶりの安値を更新後に急騰した際の154円54銭を超えて円高ドル安が進展しました(為替水準はブルームバーグに基づく)。本邦通貨当局が再び為替介入を実施したとの観測も広がっているようです。

2024年入り以降、米国景気の堅調とインフレの粘着性の高まりを示唆する統計の発表が相次いだ結果、24年中の市場の利下げ観測は6~7回から、足元では2回の利下げを完全には織り込めないところまで後退し、長期金利が上昇、株価の重石となるとの懸念も残存しています。ただし、24年1-3月期の実質GDP成長率が市場予想を下回るなど、米国経済に減速感も見え始めています。このため、インフレ鎮静化を待って利下げに転じるFRBの政策姿勢は市場の安定に寄与すると考えられます。一方で、インフレの鎮静化ペースが鈍化する、あるいは再加速した場合には市場が不安定化する可能性が高いため引き続き注意が必要です。

(野村證券投資情報部 尾畑 秀一)

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