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日本:2024年1-3月期決算レビュー

2024年1-3月期決算まとまる

2024年1-3月期決算がほぼ出揃いました。事前のコンセンサス予想と比較すると、円安米ドル高を背景に増収率は事前コンセンサス予想(前年同期比+3.3%)を上回ったものの、鉱工業生産が低調に推移したことから営業利益はコンセンサス予想(同+17.4%)を下回る結果となりました。

2024年1-3月期は、米ドル円レートが前年同期に比べ16円/米ドル、円安となりました。日本企業の利益は1円/米ドルの円安で0.4%程度増加するとみられるため、為替により6%強の増益要因となりました。ただ、中国経済の停滞や、一部自動車メーカーの操業度低下などにより鉱工業生産は前年同期比4%減と非常に大きな落ち込みとなりました。1%の生産減は3%強の利益減となることから、14%程度の減益要因となったとみられます。  

このように、円安の恩恵を大きく上回る生産減の悪影響で、本来であれば減益の可能性があった企業業績ですが、コスト増分を価格転嫁する動きも活発で、業績面への悪影響は限定的でした。

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中国依存度の高い業種が不調だった

主要業種グループの、2024年1-3月期の営業利益増減益寄与額を見ると、事前コンセンサス予想では公益・インフラを除く、ほぼ全業種で増益寄与が見込まれていましたが、実際には素材、エレクトロニクス、情報などが前年同期比で営業減益となりました。  

中国での在庫調整が想定以上に長期化したことから製造業中心に影響が顕在化したものとみられます。ただ今回の決算発表時に、中国依存度の高い企業の多くから、足元で在庫が減少しているなど業況感の底打ちを示す発言が聞かれました。また、中国事業の減損に踏み切った企業も一定数見られ、2024年4-6月期以降は、中国事業が日本企業業績の足かせとなる可能性は低下すると見られます。

期初会社見通しは微減益のスタート

例年4-5月にかけての通期決算発表時には、決算実績の結果もさることながら、新年度の会社側の利益見通しに、より注目が集まります。この新年度の会社側の利益見通しを占う際に参考にされるのが、一足先に明らかにされる日銀短観3月調査による大企業経常利益見通しです。

連結ベースの会社側見通しは、単体ベースの日銀短観3月調査の経常利益見通しに対し高めとなる傾向があります。これは、成長率の高い海外事業からの利益拡大が、上場企業の多くが属する大企業の成長ドライバーとなっていることに起因します。  

今回も日銀短観の前年度比-3.7%に対し、決算発表と同時に明らかになった会社側見通しは同-1.6%とやや上回っています。ただ、野村アナリスト予想(同+3.3%)に比べると控えめな見通しとなっています。

期中で上方修正の可能性 

期初の会社側の見通しに保守的な傾向があることは広く知られていますが、会社側の米ドル円レート前提も、今回は為替市場が不安定な推移を続けていることもあり、例年以上に保守的です。2024年5月20日の段階で、75%もの企業が米ドル円レートの前提を、140~145円/米ドルと置いており、足元の150円/米ドル台半ばの為替レートとはかなりの距離感が存在しています。

1円/米ドルの円安は0.4%程度の利益増加につながるので、2024年4-6月期には難しいとしても、2024年7-9月期の決算発表シーズンに145円/米ドル以上の円安水準が維持されていれば、円安を理由にした会社側の利益見通しの上方修正が期待できます。  

また、今後の日銀の金融政策の動向や、円安に対する介入などにより現在より円高に振れたとしても、140円/米ドルを大きく割り込む円高にならない限り、会社見通しが崩れる可能性は低いでしょう。

(野村證券投資情報部 伊藤 高志)

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