目次
・日本の企業業績見通しの下方修正は保守的な色彩が強い
・FRBの利下げは先送りもいずれ実施へ
・米国企業業績の拡大は幅広い業種に広がる
・中国政府による断続的な政策対応が続く
・日本銀行の次の一手はバランスシート縮小
・日本の主要企業の業績は拡大へ
日本の企業業績見通しの下方修正は保守的な色彩が強い
日米で、2024年1-3月期決算発表はほぼ一巡しました。米国では企業業績の上方修正が続いています。日本の企業業績は、2023年度の実績は上振れて着地したようですが、2024年度は会社の保守的な期初計画の影響もあり、アナリストの業績見通しが下方修正されています。しかし、日米ともに巡航速度の経済成長が続き、米国はいずれ利下げ局面に入るとみられます。我々は、米国株式市場は金融相場から業績相場に、日本株市場も業績拡大が続くことで、株式市場の好環境が持続するとみており、この見方に変更はありません。
FRBの利下げは先送りもいずれ実施へ
米国では雇用環境のひっ迫からの緩和が進むものの、景気は良好で、インフレ率も望むような減速は進んでいません。FRB高官のほぼ全員が、政策金利を当面据え置くことが望ましいと主張しています。一方、インフレ率は加速しておらず、いずれ利下げが行われるとの見方は変わっていないため、長期金利の更なる上昇は限定的とみられます。
米国企業業績の拡大は幅広い業種に広がる
米中貿易問題は続いていますが、バイデン政権の対中追加制裁関税は一部の戦略製品に対象が限られており、経済や物価への影響は限定的でしょう。企業業績は大手テクノロジー企業を中心に増益モメンタムが続いており、AIに関連するビジネスが急拡大しています。今後は、大手テクノロジー企業以外にも業績拡大が広がるとみられ、株価の下支えになるとみられます。
中国政府による断続的な政策対応が続く
ユーロ圏の景気は持ち直しつつあります。インフレ率が減速する中で、ECBによる6月の利下げの可能性が高まっていますが、ECB高官の多くは続く7月の連続利下げには消極的なようです。中国では不動産市場の低迷が景気の重石となっています。中国政府は断続的に景気対策や経済問題に対する対応策を発表しており、景気の安定化に努めています。
日本銀行の次の一手はバランスシート縮小
日本の製造業は、自動車の挽回生産や設備投資関連の機械などを中心に、生産増が予想されています。春闘の歴史的な賃上げに対して、実際の賃金上昇率への反映はこれからのようです。日本銀行の追加利上げには、賃金上昇などの条件が満たされておらず、まだ時間を要するとみられます。一方、国債買入れの減額など、日本銀行のバランスシート縮小に向けた議論が進められており、円安懸念に対する金融面での対応の一つとなるでしょう。
日本の主要企業の業績は拡大へ
日本の主要企業の2024年度業績見通しは、事前予想に対して下方修正が進みました。ただし、生産の回復や保守的な為替前提を踏まえると、時間の経過と共に下方修正要因となった懸念や悪材料が薄らぎ、業績予想の上振れが期待されます。東証の「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」として、企業の成長戦略への取り組みや大規模な自社株買いなども相次いで発表されました。景気と企業業績の拡大に加え、このような企業行動が続く中で、野村證券は2024年内の日経平均株価のレンジ高値を44,000円と予想します。
投資戦略については、日本では業績見通しの引き下げが株価の重石となっているようですが、経済ファンダメンタルズ(基礎的条件)などは、今後の業績拡大を否定するものではありません。米国の利下げ先送りが一定程度織り込まれた後は、引き続き、日米企業業績の拡大が株価を下支えするとみます。
(野村證券投資情報部 小髙 貴久)
※野村證券投資情報部「Nomura 21 Global 6月号」(発行日:2024年5月27日)「投資戦略の概要」より
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