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4月30日~5月1日に開催されたFOMC(米連邦公開市場委員会)の議事要旨が公開されました。その中で、「ディスインフレのプロセスが従来考えられていたよりも時間がかかる可能性が高い」との見方が示された一方、「多くの参加者は政策の引き締め度合いについて不確実性がある点について言及した」と述べられています。FOMC後のFRB(米連邦準備理事会)要人からの発言をみても、概ねこの時点の判断が続いていることがうかがえ、インフレに対する警戒感が根強い状況が続いています。

2024年1-3月期の米国のインフレ関連の経済指標は概ね上振れました。しかし、同年4月の消費者物価指数、及び雇用統計における時間当たり賃金の伸びが同年3月から減速したため、市場におけるインフレ警戒感はやや後退しています。米国10年国債利回りは24年4月下旬に一時4.7%台まで上昇しましたが、足元では4.6%台へやや低下しています(24年5月29日時点)。

改めて、FOMC議事要旨を点検してみると、「24年1-3月期のECI(雇用コスト指数)は前年比では減速しているものの、前期比では顕著に加速した」との記述があります。雇用コストに関連する経済統計の中でも、賃金のみならず福利厚生費なども含めたより広範囲の労働コストを集計したECIをFRBは重視しています。24年1-3月期のECIは前期比年率+4.8%と、23年10-12月期の同+3.8%から加速しました。セクターや主要な構成項目全体で比較的広範に顕著な上昇を示しており、上振れが一時的ではない可能性があります。

労働コストは他の経済統計に比べ遅行的ではありますが、下方硬直性、つまり一旦加速傾向となった場合、減速するまでに時間がかかりますので、金融政策の効果を計るうえで、相応の時間軸が必要となります。前回の24年3月のFOMCで示された参加メンバーの政策金利見通しの分布、いわゆるドット・チャートでは、1回当たりの利下げ幅が0.25%ポイントとすれば、24年中の利下げ回数が3回であることが示されました。24年6月11-12日に開催される次回のFOMCでは新たな政策金利見通しが公表されますが、24年内の利下げ回数が3回から2回に修正される可能性があります。ただし、FF(フェデラル・ファンド)金利先物市場などで観察される24年内の利下げ回数は現在2回未満と想定されており、その意味では市場期待とのギャップはほぼなくなるものと推察されます。

雇用コストの減速に時間がかかり、米国10年国債利回りが高止まりするシナリオを十分視野に入れるべきと考えます。米国株式のバリュエーションを考える際には、EPS(1株当たり利益)などの企業収益がどの程度増益になるかがより注目されることでしょう。

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