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インド総選挙:与党連合が苦戦ながらも勝利

与党連合は辛勝

インドの総選挙(連邦下院:ローク・サバー。総議席数543、過半数272)の投票が2024年4月19日から6月1日まで7回に分けて実施され、6月4日に開票が終了しました。インド人民党(BJP)の率いる国民民主同盟(NDA)は過半数の議席を獲得しましたが、BJPは単独では過半数の議席を確保できませんでした。開票直前になって、BJPが単独過半数を獲得するのではとの観測が一部に流れ、インドSENSEX指数は2024年6月3日に、一時76,000ポイント台後半へ上昇し、史上最高値を更新しました。しかし、6月4日に開票が進むにつれ、NDAは辛うじて過半数を維持する見込みとの観測を受けて、6月4日には前日比-5.7%と急落しました。NDAの中でも最も企業寄りの政策を志向するBJPが苦戦したことが主因と思われます。

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インドではIT産業の集積化が進む

インドは国土が広く、多民族、多宗教、多言語の国であるがゆえに、従来より多くの政党が乱立し、少数与党の時代も余儀なくされてきました。そうした中、グジャラート州の州首相時代に電力インフラを整備し、外資の自動車メーカーなどの誘致に成功し、高成長を遂げた実績を背景にモディ現首相が2014年の総選挙でインドの首相に選出されたことはインド経済の転機となりました。少数与党の時代には、経済成長のポテンシャルはあるものの、それを顕在化させる様々なインフラを整備するための法案の成立が困難でした。議会の過半数を有する安定したモディ政権の10年間は、まだまだ道半ばながらも道路、鉄道、港湾、電力などのインフラ整備が前進しました。金融制度や税制の整備も加わり(下表)、スマホ、半導体など米国のハイテクを中心とした外資系企業の進出も相次ぎ、自動車に加え、IT産業の集積化が進んでいます。

引き続き、製造業の育成がカギ

実際、インドの輸出総額に占める電気機器のシェアは近年伸びています(下図)。インドのGDPに占める製造業の割合は20%に満たないため、雇用の受け皿となる製造業の育成が引き続き経済政策の中心となるでしょう。BJPのマニフェストでは、自動車、半導体などのセクターでグローバルハブになることを目標に掲げ、AI(人工知能)、量子コンピューターの研究に軸足を置くことが掲げられています(左下表)。こうしたセクターがインド経済の牽引役となることが想定されています。なお、国際通貨基金(IMF)の推計によると、インドのGDPは2025年に4兆3,398億ドルとなり、4兆3,103億ドルの日本を抜いて世界4位に浮上する見込みです。

与党内での政策のすり合わせが必要

モディ首相は連立パートナーの主要2政党の支持を確保したと報じられています。これによりモディ首相は政権継続が可能となります。ただし、BJP自らも議席数を大幅に減らしたため、今後、主要閣僚のポストの割り当ても含めて、連立パートナーの政策の意向をくみ取る必要があるでしょう。今回の大幅議席減少の要因は、所得格差の拡大、ヒンズー至上主義を掲げるBJPに対する反発などが考えられます。BJPのマニフェストの中にも貧困層対策が掲げられていますが、より弱者に寄り添った政策へ軌道修正することも考えられます。

財政赤字拡大がリスク

インドの2024年1-3月期の実質GDPは前年同期比+7.8%と2023年10-12月期の同+8.6%からは鈍化したものの、高成長が続いています。また、インド国債は2024年6月28日からJPモルガン新興国債券指数に、2025年1月にはブルームバーグの債券指数にそれぞれ組み入れられる予定です。更に、米大手格付け会社はインドのソブリン(政府債)格付け見通しを「安定的」から「ポジティブ」に変更しました (※)。こうした好材料の一方、注意すべき点はインドの財政赤字です。IMFは2024年のインドの財政赤字対GDP比を7.8%と予想しています。前述の政策の軌道修正次第で財政赤字が拡大する可能性には注意が必要です。

(※)格付けは金融商品取引法に基づく信用格付業者以外の格付業者が付与した格付け(無登録格付け)です。無登録格付けについては最終頁の「無登録格付けに関する説明書」をご参照ください。

(野村證券投資情報部 佐々木 文之)

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