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「1ドルの設備投資が5ドル超の売上高をもたらす」。AI演算用チップやプログラミング環境を提供するエヌビディアの2024年2-4月期決算説明会でのコメントです。これは、AIサービス事業者の向こう4年間の数値で、成功した事業の場合と推察されますが、高い投資効率といえます。
2023年1月の、マイクロソフトと生成AIチャットを手掛けるOpenAIの提携強化以降、AIの利用が拡大しました。マイクロソフトは、クラウドやビジネスソフトへAIを導入し、収益化で先行しました。マイクロソフトの2024年1-12月期の設備投資額の市場予想は2023年初時点から2024年5月30日までに172億ドル分(約55%)増加しました。
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(注)正式名称は、アマゾンはアマゾン・ドットコム、メタはメタ・プラットフォームズ。AI・クラウド大手企業は全てを網羅しているわけではない。2024年は暦年(1-12月期)。数値は2023年初時点から2024年5月30日への変化額。
(出所)LSEGより野村證券投資情報部作成
クラウド、インターネット広告、サービスでAIを活用するアルファベットやアマゾン・ドットコム、メタ・プラットフォームズは主に2024年初以降に設備投資の増額を発表しました。
AI向け設備投資の受け皿企業であるエヌビディアの2026.1期通期の1株当たり純利益(EPS)市場予想は2023年初時点から約5.5倍となり、これに連動する形で同社の株価も上昇しました。
(注)データは日次で、直近値は2024年5月30日時点。EPS は非米国会計基準の希薄化後1株当たり純利益。株価とEPSは1:10株式分割前。
(出所)LSEGより野村證券投資情報部作成
2024年5月26日、テスラCEOのイーロン・マスク氏が設立したAI企業のxAI(エックスエーアイ)が60億ドルの資金を調達したと発表しました。AI事業の収益化の確実性が高まり、市場の評価が上がり、融資につながったと推察されます。金融による資金流入の拡大が、AI業界の発展を加速させると考えられます。
経済成長の3要素は、①労働、②設備(資本)、③生産性(技術進歩や人的資本の向上など、労働と設備以外の要因)です。AIに関しては、②の設備投資が行われており、膨大なデータを活用し「希少・高価なモノ・サービスを手軽・安価にする」ことで③の生産性を向上させ、経済成長に貢献するとみられます。
既に、インターネット広告ではAIの活用が収益成長に貢献し始めています。また、ビジネスでは文章要約や校正、検索、グラフの作成などのAI機能の利用が始まっており、業務効率化が期待されます。AIによる高度な生成画像・動画が、ゲームや映画に活用されることも見込まれます。
今後は、例えば小売では、需要予測の精度を上げて廃棄を削減し、省資源やコスト削減を達成することが期待されます。創薬では、従来は時間とコストをかけて行うことが一般的でしたが、AIの利用による開発期間の短縮やコスト削減が期待されます。物流や輸送では、完全自動運転(レベル5)の実装が注目されます。日本では2027年にレベル5の公道での実証実験が計画されています。
AI活用により収益性が高まる産業や企業には、高所得を背景に優秀な人材が集まり、生産性がさらに高まるといった好循環が生まれると想定されます。