年内利下げは前回の「3回」から「1回」へ見直しも、市場の反応は限定的

FRB(米連邦準備理事会)は2024年6月11-12日にFOMC(米連邦公開市場委員会)を開催し、大方の事前予想通り政策金利の据え置きを決定しました。注目された政策金利見通し(中央値)は、1回当たりの政策金利の変更幅を0.25%ポイントとした場合、24年中の利下げ回数は前回(24年3月)時点の3回から1回へ25年に関しては前回の3回から4回へ変更されました。直前のブルームバーグの調査では、24年中の利下げ回数見通しは「2回」と「1回あるいは利下げなし」との見方に2分されていたことから、市場にとって大きなサプライズではなかったと見られます。

声明文ではインフレに関する文言が、「(ここ数ヶ月に)委員会が目指す2%のインフレ目標に向けては緩慢なる一段の進展が見られた」と、利下げに向けて判断が一歩前進したことを示しました。また、会合後の記者会見でパウエル議長は「インフレ率が持続的に2%に向かっているという確信を強めるには、良好なデータをさらに目にする必要がある」と従来の見解を繰り返し、利下げに向けて慎重に判断する姿勢を改めて示しました。

結果発表前に発表されたCPIはインフレ鈍化を示唆も、神経質な展開続く

米国市場では寄り前に発表された5月のコアCPI(食品・エネルギーを除く消費者物価指数)が2ヶ月連続で鈍化したことが好感され、米国債市場では利回り曲線全域に渡って金利が低下、ハイテク関連を中心に株価が反発し、S&P500株価指数は過去最高値を更新しました。一方、ドルは主要通貨に対し全面安となり、対円では一時155円台まで下落しましたが、FRBによる24年利下げ見通しの修正を受けて156円台へ持ち直しました。

市場では米国経済のソフトランディング(軟着陸)とインフレ鎮静化が同時に達成され、FRBは利下げに転じ、長期金利が低下するとの期待から米国株は堅調に推移しています。ただし、利下げ見通しの下方修正が続いているように、このような見通しの実現に向けたハードルは必ずしも低くはありません。このため、米国市場では景気・インフレ動向と金融政策の行方に対して神経質な展開が続くと予想されます。

(注)図中の●はFOMC参加者が予想するその年の年末の政策金利(FF(フェデラル・ファンド)金利翌日物)のレンジの中央値。引き出し線で示されている数値は、参加者の予想中央値。政策金利のレンジ幅は0.25%であるため、例えば5.00%~5.25%のレンジを予想している参加者は中央値が5.125%となる。長期は長期先の着地点(Longer run)。2024年3月見通しの長期は、18名の回答中、9番目が2.500%、10番目が2.625%となるため、中央値となる2つを併記している。見通しは3の倍数月のFOMCの開催後に発表される見通しで、それぞれのFOMCの日程は2024年3月は3月19-20日、2024年6月は6月11-12日。
(出所)FRBより野村證券投資情報部作成

(野村證券投資情報部 尾畑 秀一)

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