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WSTSの2024年春季世界半導体市場予測

2023年・2024年ともに上方修正

米国時間6月4日に、主要半導体メーカー48社で構成される業界団体、WSTS(世界半導体市場統計)が、2024年春季の半導体市場の見通しを発表しました。今回の予測は、2024年3月までの実績値を基に作成したとのことです。

半導体市場全体は、2023年実績と2024年予想が、前回発表時点(2023年11月)よりも上方修正となっています。2023年は前年比縮小しましたが、2024年については拡大に転じ、これまでの過去最高だった2022年の5,741億米ドルを超えるという方向に変わりはありません。そして、今回新たに示された2025年は、さらに拡大が続くと予想されています。

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(注)灰色は実績、薄い赤色は2023年11月時点、赤色は2024年6月時点のWSTS(世界半導体市場統計)による予測。
(出所)WSTS、LSEGより野村證券投資情報部作成

生成AIがけん引、メモリーも回復へ

発表資料の中でWSTSは、2023年について、「世界的なインフレやそれに伴う利上げ、地政学リスクの高まりなどが個人消費や企業の設備投資等に影響し、AI関連・自動車用途を除き半導体需要は低調であった」としています。

2024年については、「前年比+16.0%と 再拡大を予測した。引き続き世界的に旺盛なAI関連投資を背景にメモリーや一部ロジック製品の需要が急拡大しており、これが牽引するものとみられる。一方AI関連を除くと上述のマイナス要因が継続し、現在に至るまで半導体需要は低調に推移している。このため今回の会議では年後半の急回復を想定し難く、通年では多くの製品で前年比マイナス成長を予測した」としています。

2025年については、「前年比+12.5%と更なる市場拡大を予測した。AI関連の需要に加え、環境対応や自動化等の成長領域を念頭に、半導体市場の継続的な成長を期待した」としています。

前年比伸び率を製品別についてみると、メモリーは2023年に前年比-28.9%と最も足を引っ張っていましたが、2024年には同+76.8%と急回復が予想されています。

なお、WSTSは、2024通年では多くの製品で前年比マイナス成長を予測したとしていますが、ディスクリート(一素子一機能の単一機能製品)、オプトエレクトロニクス、センサー、アナログなどでマイナス成長が予想されています。

一方、WSTSが生成AIの恩恵を受け易いとコメントしているロジック製品は、前年比+10.7%と予想されています。

(注)世界半導体市場の地域別・製品別内訳。2024年、2025年は2024年6月時点のWSTS(世界半導体市場統計)による予測。
(出所)WSTS、LSEGより野村證券投資情報部作成

地域別の動向をみると

地域別では、2024年は米州、アジア太平洋が前年のマイナス成長から大きく反発する予想となっています。一方、欧州・中東・アフリカは前年比微増、日本は若干のマイナスが継続する予想となっています。

2023年11月時点の予測と比較すると、米州、アジア太平洋が2023年、2024年共に上方修正されている一方、日本と欧州・中東・アフリカは下方修正となっています。

このような地域別の動向は、メモリーやロジック製品は米州、アジア太平洋の半導体メーカーが多い一方、ディスクリート、オプトエレクトロニクス、センサー、アナログなどは、欧州や日本の企業が多いことがあると推察されます。

(注)2023年、2024年予は2024年6月時点のWSTS(世界半導体市場統計)による実績集計及び予想。修正額及び修正率は、2023年11月時点の予測金額からの修正動向。
(出所)WSTSより野村證券投資情報部作成

今後の注目点

今回発表されたWSTSの予測は、2024年の予測が前回発表よりも上方修正され、今回新たに示された2025年はさらに拡大が継続する予想となっています。

生成AIが牽引し、メモリーやロジック製品の需要が拡大していることが、半導体市場全体を押し上げている一方、ディスクリートやオプトエレクトロニクス、センサー、アナログなど、一般産業向けが多い製品群では2024年も引き続きマイナスが予想されるなど、懸念される部分もあります。

今後、各半導体メーカーの四半期決算や、業界に関する各種報道などを通じ、半導体市場全体の状況や、製品別の動向を把握していきたいと考えます。

(注)2022年末=100とする指数。直近値は2024年6月12日。フィラデルフィア半導体株指数は、米国の証券取引所に上場する主要な半導体関連30銘柄で構成される株価指数。
(出所)LSEGより野村證券投資情報部作成

(野村證券投資情報部 村山 誠)

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