※執筆時点 日本時間14日(金)12:00

今週:FOMCを無事通過、情報技術セクターに期待

※6月7日(金)-6月13日(木)4営業日の騰落

アップル(AAPL)の開発者会議やアドビ(ADBE)、オラクル(ORCL)の3-5月期決算が堅調だったことを受けて、情報技術関連銘柄が主導し、S&P500 とナスダック総合は史上最高値更新を続けました。

アップルは上場来高値を更新

米国時間11日(火)にアップルの株価は前日比+7.26%の207.15ドルで引け、上場来高値を更新しました。前日10日(月)には、同日に開催した年次開発者会議、WWDC(Worldwide Developers Conference)を受けて、アップルの株価は前日比-1.91%の193.12ドルで取引を終了していました。しかし11日は、一転して上昇し、上場来高値更新となりました。

今回のWWDCでアップルから独自の大規模言語モデルの発表がなかった点を捉えて、マイクロソフト(MSFT)アルファベット(GOOGL)傘下のグーグル、アマゾン・ドットコム(AMZN)など、独自の大規模言語モデルを展開する企業と比べて、アップルのAI戦略が見劣りするという論調も散見されます。他方、アップル製品のユーザーにはiPhone等でできることには関心はあるものの、技術自体にはそれ程関心がない方も多いと推測されます。あまり技術的な側面に重きを置きすぎずに、ユーザーの視点で判断をしていくべき局面とも考えられます。

今後は、8月初旬に予定される当社の4-6月期決算発表や、例年9月に予定される新製品の発表に注目が集まります。

アドビ、オラクルは決算発表後に株価上昇

今週はソフトウェアセクターの3-5月期決算も好調なものが目立ちました。オラクルは11日(火)引け後に決算を発表し、翌日12日(水)には前日比+13.3%と上昇しました。アドビは13日(木)の引け後に決算を発表し、時間外取引で同日終値比+14.75%上昇しました。オラクルはクラウドインフラ部門の売上高が市場予想を上回ったことやオープンAIやグーグルとの提携を発表したことなどが、アドビは売上高と1株当たり利益の通期予想を引き上げ、市場予想を上回ったことなどがそれぞれ市場に好感されたと考えられます。

これまでの生成AIは設備投資やハードを準備する段階であり、情報技術の中でも半導体が特に注目されていましたが、今後生成AIや半導体を利用してサービスを提供する側のソフトウェアにも市場の注目が集まるシナリオも想定されます。

FOMCは無事通過、金利は上方修正

FRB(米連邦準備理事会)が11-12日に開催したFOMC(米連邦公開市場委員会)では、大方の事前予想通り政策金利の据え置きを決定しました。注目された政策金利見通し(中央値)は、1回当たりの政策金利の変更幅を0.25%ポイントとした場合、24年中の利下げ回数は前回(24年3月)時点の3回から1回へ変更されました。また長期の政策金利見通しも2.75%へと3月FOMC時点の2.6%から引き上げられました。

全体として、FOMCで発されたメッセージからは金利低下が株価の追い風になるという展開は期待しづらい内容だったと言えます。一方、経済指標に目を向けると、5月CPI(消費者物価指数)が市場予想を下回るなどインフレ鈍化を示唆するものも増えています。

来週のポイントは”ハードデータ”

18日(火)に5月小売売上高、5月鉱工業生産、20日(木)に5月住宅着工・建設許可件数、21日(金)に5月中古住宅販売件数と注目度の高いハードデータ(実際の経済活動を表すデータ)の発表が予定されています。米国では2024年に入って、特に個人消費関連で利上げの影響を示す経済指標が散見され始めました。この点では、住宅関連統計の結果が注目されます。また、目先の景気動向を見極めるうえでは、6月のNY連銀(17日(月))やフィラデルフィア連銀(20日(木))の製造業景気指数、21日(金)発表の米国を含む、主要国の6月PMI速報値が市場の関心を集めると見られます。

当面は、経済指標やFRB幹部の発言等を通して、FRBの経済の現状認識と金融政策のスタンスを確認し、利下げ開始時期を見極めていきたいと考えます。   

(編集:野村證券投資情報部 小野崎 通昭)

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