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「SNS型投資詐欺」という新たな投資詐欺が増加しています。主にSNSを通じて接触し、投資の名目で金銭をだまし取るという手口で、実在する著名人の名をかたるケースも発生しています。警視庁や国民生活センターに具体的な手口や予防策について取材しました。

SNS型投資詐欺は2023年から急増

警察庁報道発表資料「SNS型投資・ロマンス詐欺の被害発生状況等について」では、SNS型投資詐欺・ロマンス詐欺ともに2023年下半期の増加が顕著であり、2023年1~12月の認知件数は全国で2,271件、被害総額は277.9億円に上ると発表されています。発表の詳細については以下のとおりです。

  • 同時に集計されたロマンス詐欺(外国人や海外居住者を名乗り、SNSなどを通じて恋愛感情や親近感を抱かせ、金銭等をだまし取る詐欺)を含め、被害者の年齢層は男性が50代~60代、女性は40代~50代が多い。
  • 1件あたりの平均被害額は1,000万円超で、被害額は500万円以下がもっとも多く、1億円を超える被害は26件。被疑者は国内の投資家や会社員、会社役員を名乗り、当初の接触ツールはFacebookやLINE、インスタグラムなどで、被害時の連絡ツールはLINEが88%と多い。
  • 警察庁は2024年3月、全国の都道府県警察に対し、捜査と抑止を含む総合的な体制を構築し、対策を強化するよう通達済み。

昨年は都内でも210件の被害が発生

警視庁によると、「都内でも多くのSNS型投資詐欺事件が発生しています。2023年のSNS型投資詐欺の認知件数は210件で被害額は約38億円。2024年も4月末現在で、昨年の被害額を上回る約48億円の被害が発生している」という回答でした。

警視庁によると、特に被害額が大きかった事案は以下のようなものでした。

「スマートフォンで著名な投資家のネットニュースを閲覧していたところ、その投資家のSNSアカウントを登録する画面が表示されたため、興味があり登録した。

すぐに挨拶のメッセージを送信したところ、『投資のテクニックを教える』との返信があり、SNS上の投資のコミュニティーに参加するよう促された。

コミュニティーにおいて、投資家や指南役に紹介された投資アプリをインストール、投資家を尊敬していたことや、アプリ上の画面で儲けが出ていたことから、投資名目や口座出金手数料名目の送金を繰り返した。投資家からもSNSのメッセージで数十億の利益がでたと言われ、さらに送金を続けたものの連絡が取れなくなり、騙されていることに気付いた。

約半年に渡り騙され続け、犯人側の口座への送金や現金を手渡しするなど、総額1億4,000万円の被害に遭った」

著名人の名をかたって勧誘

警視庁の担当者は、最近目立つSNS型投資詐欺の手口について、以下のように回答しました。

「近年、特に目立つ手口は、『本人の知らないところで、SNSの“投資グループ”を名乗るグループに勝手に参加させられた』『インターネット上で投資について検索し、著名人が『投資に興味のある方はSNSで繋がりましょう』などと宣伝する広告を見つけてクリックし、SNSで詐欺グループと友達登録してしまった』というもの。

その後、参加したSNSグループで著名人を騙った者や指南役が登場し、グループメッセージで『〇〇万円儲かった』などのやりとりがあり、高額な利益が出ると被害者が誤信させられます。同時に偽の投資アプリケーション(金、原油先物取引、仮想通貨、FXなど)のインストールを勧められ、アプリ上のチャートでは、あたかも利益が出ているような偽の表示が出たケースもあります。

被害者は、最初に少額の投資を実行し、アプリ上で儲けが出たことや、実際に利益が振り込まれたことで、犯行グループを信じ込みます。その後は高額の送金を繰り返しますが、出金をする前に連絡が取れなくなり、被害が拡大してしまう、というものです」

ターゲットは「投資に興味がある人」

警視庁は以下のように注意喚起しています。

「ターゲットは、投資に興味がある方々。投資して資産を増やそうと思っている方すべてが、被害に遭う可能性があります。インターネット上で著名人を騙り、高利回りをうたう広告や儲け話は注意が必要です。特にSNSに誘導しようとする時点で詐欺を疑ってください。SNSにおけるメッセージのやり取りもよく確認をしてください。日本語が不自然である場合があります。

また、騙った会社名と送金先の会社名が違ったり、毎回違った名義や個人宛てに送金させたりするケースにも注意してください。『出金のために手数料が数千万円かかる』『税金を払うため送金を指示する』などは冷静に考えればありえないことです。さらに、相手方が金融商品取扱業者を名乗っていても、実際に取引を開始するときには、金融商品取引法に基づき金融庁に申請・登録をしている正規の業者かを確認してください。

金融商品の販売、勧誘には金融商品取引法でルールが定められています。『金融商品取扱業者』であることや、『登録番号』などが表示されているか必ず確認してください。また、著しく人を誤認させるような広告も禁止されています。『必ず値上がりする』『楽して儲ける』などメリットのみ強調する広告には注意してください。

大切な資産を失い、家族にも相談できない方も多いと思います。特定非営利活動法人『証券・金融商品あっせん相談センター』(フィンマック)や最寄りの警察署で相談を受け付けています。投資に関する情報にすぐに飛びつくことなく、よく調べる、身近な人に相談するなどの防御する術を身に付けてください。不安に感じることがあれば、遠慮することなく警察に相談してください」

国民生活センター「被害回復が困難」と注意喚起

消費者問題を扱う独立行政法人「国民生活センター」も5月、SNSをきっかけに、著名人を名乗るなどして勧誘される金融商品・サービスの消費者トラブルが急増しているとして、「いったん振り込みしてしまうと、被害回復が困難です!」と注意喚起を行いました。

同センターHPによると、「『○○(著名人)が主催する投資の勉強会』『○○(著名人)が投資のノウハウを教える』『○○(著名人)と知り合いで儲かる』などと勧誘され、投資名目で振込をしたものの、『追加費用を支払わないと出金できないと言われた』『相手と連絡が取れなくなった』などの被害が発生。全国の消費生活センターに寄せられた相談と平均契約購入金額※は、2022年度には170件、平均契約購入金額234万円だったのに対し、2023年度は1,629件と約9.6倍に増加。被害額も687万円に急増(※)」とのことです。

(※)PIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)における「SNSをきっかけとして、著名人を名乗る、つながりがあるなどと勧誘される金融商品・サービスの消費者トラブル」の相談件数及び平均契約購入金額の推移

具体的な相談事例として、「有名経済評論家の投資相談に参加したところ、アシスタントを名乗る人に次々と投資を勧められ、総額1,500万円を振り込んだが出金できない」というものを掲載しています。

「母から相続した資産で投資をしようと考えていたところ、有名経済評論家が主催する投資相談のSNS広告が表示され、100万円が1億円になったとの体験談が掲載されていたので興味を持ち、メッセージアプリへ登録した。すると有名経済評論家のアシスタントを名乗る人からメッセージが届き、海外株が短期で値上がりすると投資話を持ちかけられた。有名経済評論家が言うことなら信用できると思い100万円を振り込んだ。すると後日『100万円では利益が少ない。追加で100万円を振り込むように』とメッセージが届き、別の銀行口座へ振り込んだ。

1週間後、『もっと利益が高い投資がある。経済評論家の先生へメッセージを送ってください』と連絡があり、別の銀行口座へ750万円と50万円を振り込んだ。さらにその2週間後、短期投資の話を持ち掛けられて250万円を2回、計500万円を新たな指定口座へ振り込んだ。

その後、運用状況で確認すると6,000万円の利益があったので資金を引き出したいと申し出たところ、出金手数料900万円と、運用している海外の株式市場に税金1,300万円を支払わないと出金できないと言われた。(2024年1月受付 60歳代 女性)」

そのほか、「『有名投資家がノウハウを発信すると謳っていたが、その有名投資家は関与しないものだったうえ、投資額を勝手に決められて違約金も請求された』『『絶対に負けない投資家を知っていて自分も投資で儲かった』という有名投資家の姪から勧められてFX取引を始めたが、連絡が取れなくなった』といった相談が寄せられている」とのことです。

SNS上での勧誘は疑って

同センターは消費者へのアドバイスとして、「▽SNS上で勧誘を受けた場合は、まず疑ってみる▽投資資金の振込先に個人名義の口座を指定された場合、それは詐欺なので振り込まない▽被害回復が難しいため、安易に投資資金を振り込むことは控える▽不審に思ったら、すぐに消費生活センター等に相談しましょう」と呼びかけています。

※本コラムで取り上げられた投資に関する基本的な考え方などについては、あくまで個人の見解によるものであり、野村證券の意見を代表するものではございません。

ご投資にあたっての注意点