※執筆時点 日本時間23日(金)12:00

今週:重要イベント待ちで様子見ムード

※8月16日(金)-8月23日(木)4営業日の騰落

経済指標はまちまち

今週の米国株主要3指標は、総じて小動きでした。住宅関連のデータでは、中古住宅販売件数が市場予想を上回った一方で、ホームセンター大手のロウズ(LOW)決算はホーム・デポ(HD)に続き売上高で市場予想を下回りました。注目されたS&PグローバルPMI速報値では、製造業PMIが市場予想を下回った一方で、サービス業PMIは市場予想を上回りました。各指標が強弱まちまちで、株価は一進一退でした。

市場の期待とパウエル講演にギャップはないか

23日(金)のジャクソンホール会議でのパウエルFRB(米連邦準備理事会)議長講演(執筆時点は講演前)と、28日(水)のエヌビディア(NVDA)決算発表を前に、市場参加者は様子見姿勢を続けていると考えられます。先物市場では、執筆時点で年内合計約1%ポイントの利下げが織り込まれています。年内のFOMCは計3回(9月・11月・12月)であるため、今の先物市場は「全てのFOMCで利下げが行われ、かつそのうち1回では利下げ幅が0.50%ポイントとなると示唆している」ことを意味します(金融政策の変更は、通常0.25%ポイント幅で行われることが多い)。ジャクソンホール会議で、パウエルFRB議長がこうした市場の織り込みをけん制するのか、追認するのかによって株価の反応は分かれそうです。

来週:エヌビディア決算発表

米国株の先行きを決めうるエヌビディア決算

来週の注目点は、28日(水)の米国市場引け後(日本では29日(木)の朝5時すぎ)に発表が予定されているエヌビディアの2024年5-7月期(2025年1月期第2四半期)です。当社の株価は、2024年末の株価(49.52ドル)から約2.5倍(21日(木)時点の株価は123.74ドル)になっていますが、6月の高値(140.76ドル)から13%低い水準です。当社の決算内容は、米国株全体へのセンチメントにも影響するため市場が注視しています。

エヌビディアの事業構成

(注)所在地別の中国は香港を含む。用途別はセグメント間調整後。

(出所)会社資料より野村證券投資情報部作成

当社はロジック(演算)半導体の一つであるGPU(画像処理半導体)が主力製品です。もともとはデータ処理負荷の高いゲーム画像表示のために作られた製品でしたが、その高い処理能力が多用途に展開され、足元では生成AI向けの需要が急激に高まり注目されています。

事業は地域別では米国向け(約4割)、用途別ではデータセンター向け(約8割)が中心になっています(2024年1月期通期ベース)。半導体業界では先端半導体の輸出規制で中国向けの先行き鈍化が懸念されていますが、前回決算である2024年2-4月期には中国(香港を含む)向けの売上高比率は10%未満となっており、相対的な影響は低下しています。

前回(2-4月期)決算は概ね好調

エヌビディアの前回(2024年2-4月期)決算は、一部の部門で市場予想を下回ったものの、主力のデータセンター部門では市場予想を上回り、売上高・EPS(一株当たり利益)、5-7月期の売上高会社見通しなど主たる項目が市場予想を上回りました。また、計算効率が高く省電力の最新プラットフォーム「ブラックウェル」を利用した新製品に対する顧客の需要は高く、需要が供給を上回る状況は少なくとも来年まで継続するとコメントしました。

足元のテックセクター動向

エヌビディアの今回の決算(5-7月期決算)は多くの米国企業より1ヶ月遅いタイミングでの決算期となるため、4-6月期決算を既に発表し終えたテクノロジーセクターの動向も参考になります。テクノロジーセクター全体では、前四半期に続きスマホやデータセンターの回復が堅調な一方で、車載・産業機械は低迷が続き格差が広がりました。データセンター関連の需要は高く、半導体だけでなく電力や重電、電子部品や電線などへ好影響が波及していることも確認されました。

個別企業も概ね「データセンター好調」を示唆

個別企業では、世界の半導体メーカーから製造を受託する台湾のTSMC(米国上場のADR(米国預託証券)のティッカーコードはTSM)の会社見通しが注目されました。当社による24年の半導体市場見通し(除くメモリー)は前年比10%増で不変でしたが、同社の売上見通しは「20%台前半~半ば」から「20%台半ば強」に上方修正されました。引き続きAI関連の需要が牽引しており需給バランスがタイトであると想定されます。

GPUの新製品の立ち上げ遅れ等も指摘されていますが、有力IT企業の設備投資計画のレンジも引き上げられ、2025年以降のAI向け先端ロジックの需要は極めて強いと見られます。ハイパースケーラー5社(アルファベット(GOOGL)、アップル(AAPL)、メタ・プラットフォームズ(META)、アマゾン・ドットコム(AMZN)、マイクロソフト(MSFT))の4-6月期の設備投資は前年同期比+55%と強く、2024年後半も投資水準を維持ないし、さらに増加させる方針が示されています。

車載・産機関連は全体として回復が遅れる傾向がありますが、企業間格差も大きい状況です。NXPセミコンダクターズ(NXPI)のように在庫を適正水準以下で維持している企業は緩やかな在庫積み増し局面に入っている一方で、マイクロチップ・テクノロジー(MCHP)は依然として在庫調整が続いており回復はやや遅れる傾向にあります。

エヌビディア決算の注目点

足元の状況を踏まえれば、エヌビディアの5-7月期決算は2-4月期決算の傾向(データセンターが強く、自動車向けなどは伸び悩む)の継続が想定されます。個別企業の株価としては、既に株式市場の期待値は高まっているため、好調な業績が確認されても利益確定の売りなどに押されて下落することも想定されます。

但し、個別株価の動向以上に重要なことはエヌビディアの決算内容によって生成AIがけん引してきた米国株全体の見方が転換しうるということです。当社の地域別やカテゴリ別の動向、ブラックウェルなどの最新半導体の出荷状況や販売の状況についての経営陣からのコメントなど、決算内容を精査することが今後の米国株投資に活かされると考えます。29日(木)朝にはNOMURAアプリでも当社決算の速報を予定しており、ぜひ米国株投資全体のご参考にしていただければ幸いです。

(編集:野村證券投資情報部 小野崎 通昭)

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