目次
・ボラティリティーの高い状況は時間と共に和らぐ
・米国の景気悪化リスクは限定的
・米国企業は増益拡大へ
・中国のデフレ輸出懸念
・日本は物価安定への信頼感が増せば追加利上げ
・日本の企業業績の拡大に対しバリュエーションは低下したまま
ボラティリティーの高い状況は時間と共に和らぐ
日経平均株価は、米国景気敏感セクターと同じように、ボラティリティー(変動率)の高い状況が続きます。米国の景気減速懸念や、日米の金融政策の方針や金利の修正ペースに対する不透明さと円高リスクが理由とみられます。しかし、米国S&P500指数やNYダウは史上最高値を更新しており、米国経済は順調な拡大が続いています。我々は、時間の経過とともに高水準のボラティリティーは低下し、日本株市場も落ち着きを取り戻すとみており、実体経済や企業業績などのファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)に沿った株価動向に回帰するとみます。
米国の景気悪化リスクは限定的
主要国・地域の景況感は、製造業と比べて非製造業は比較的良好です。米国では、インフレ率が減速する中で、失業率が小幅に上昇しています。しかし、家計の債務や信用リスクの状況などから判断して、スパイラル的な景気悪化リスクは限定的です。利下げが進めば、住宅投資や消費が復調し、景気の下支えになることが期待されます。
米国企業は増益拡大へ
米国大統領選挙の行方が注目されますが、政府の政策推進力を見る上では議会選挙も重要です。他方、FRB高官の見通しによると、利下げは2026年にかけて続くと予想されていますが、金融市場はより早い時期に3%弱まで政策金利が引き下げられ、着地するとみているようです。逆イールド(長短金利の逆転)が解消し、景気軟着陸の可能性は高いとみられます。増益ペースは、大手テクノロジー企業で減速するものの、幅広い業種に増益拡大が広がり、S&P500指数にみるEPS(1株当たり利益)は、2024年終盤以降、二桁増益が続くでしょう。
中国のデフレ輸出懸念
ユーロ圏は中核国のドイツを中心に悪化懸念が強まっています。ECBは四半期に1度のペースでの利下げを続けるとみられます。中国は、不動産市況の低迷などを理由に内需を中心に景気が減速しており、供給能力の過剰を背景とする海外へのデフレの輸出が懸念されます。
日本は物価安定への信頼感が増せば追加利上げ
日本の輸出は自動車などを中心に弱含んでいますが、中国向けへは半導体の国産化などから半導体関連の輸出が増えています。製造業の在庫水準は十分抑制されており、在庫循環は好転入りに至ったとみられます。また、名目賃金は明確に上昇しています。消費者物価(除く生鮮食品)の上昇率は2%を上回って推移しており、賃金上昇を反映した物価の安定への信頼感が増せば、追加利上げが視野に入るとみられます。
日本の企業業績の拡大に対しバリュエーションは低下したまま
日本銀行は、市場のボラティリティーの低下を見極める一方、2025年度以降における、物価目標2%の見通し達成の実現確度の高まりを見て、追加利上げを行う方針にあるようです。金利は緩やかに上昇するとみられます。米ドル円相場は米日金利差縮小を背景に円高が進んできましたが、米国の利下げ期待はだいぶ織り込まれてきたとみられます。自民党総裁選挙後は、新政権の政策や解散総選挙の時期が注目されます。この様な中でも企業業績の拡大は続いており、バリュエーション(株価に基づく企業価値評価)は、大きく低下したままです。野村證券は、2024年末の日経平均株価の予想レンジ上限を40,500円と予想しています。
投資戦略については、日米の政治イベントや金融政策の見通しが見定められるまで、ボラティリティーの高い状況が続くでしょう。しかし、日米ともに主要企業の業績は過去最高益の更新が続くとの見方は不変で、株価は最終的に業績の趨勢に回帰するとみます。
(野村證券投資情報部 小髙 貴久)
※野村證券投資情報部「Nomura 21 Global 10月号」(発行日:2024年9月24日)「投資戦略の概要」より
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