執筆:野村證券株式会社フード&アグリビジネスビジネス・コンサルティング部
シニア・アソシエイト 谷 和希(2024年10月10日)
はじめに
日本を代表する畜産物の中に「和牛」がある。日本では、お祝い事や年末などに食されることも多く、国内で生産されている肉牛(枝肉ベース)のうち約48%(2023年度実績)が和牛となっている(他は「交雑牛」と「ホルスタイン牛」)。和牛を中心とする国内の牛肉消費は、高度経済成長期(1960年頃~1970年代初め)から2000年頃までの間に5倍ほど増加したが、ここ20年はほぼ変わらず伸び悩んでいる。その一方、昨今、訪日外国人の増加や国の輸出促進なども奏功し、米国や香港をはじめとする海外では「WAGYU(和牛)」の人気が高まっている。事業拡大を志向する日本の肉牛事業者にとっては好機と考えられる。
本稿では、国内肉牛業界の現状と課題を整理し、持続的な輸出拡大に向けた取組みのポイントを考察する。
1.国内肉牛業界の現状
(1)肉用牛の飼養戸数と頭数
国内の他産業と同様、肉牛業界でも担い手は減少し続けている。肉用牛の飼養農家戸数は1989年に24.6万戸あったが、毎年減少を続けており、2023年2月1日時点で3.8万戸と、この30年強でおよそ85%も減少した。この間、飼養農家戸数が前年を上回る(増加している)年はないことから、今後も減少幅が小さくなったとしても、減少トレンドは変わらないと想定される。
しかし、肉用牛の飼養頭数をみると、1989年時点で162.7万頭に対し、2023年時点では188.2万頭と増加している。この間、約160万頭から190万頭の間で推移しているが、肉用牛は相場により価格が左右される性質を持っていることから、その時期の相場によって頭数を調整しているものと考えられる。
その結果、一戸当たりの飼養頭数は1989年の6.6頭から2023年で48.8頭に増加しており、一戸当たりの規模拡大が進展していることがわかる(図表1)。規模拡大により、飼料や飼育設備の単位調達コストの削減効果をはじめ、管理や運営の効率も向上し、生産性の向上というスケールメリットを実現できる。肉用牛経営の大規模化はトレンドとなっており、今後は小規模事業者が減少し、大規模事業者が増加、もしくは更なる規模拡大をしていくことが想定される。
図表1 国内肉用牛の飼養戸数・頭数・一戸当たりの飼養頭数推移
(2)肉用牛の生産量と消費量
次に、肉用牛の国内生産量と消費量の推移を確認したい。肉用牛は大きく、「和牛」、「交雑種」、「ホルスタイン」の3つに分類されている。和牛は黒毛和種、褐毛和種、日本短角種、無角和種などが代表的で、交雑種はホルスタインと和牛の雑種、ホルスタインは生乳を生産する牛を肉用として扱うものとなっている。
肉用牛の生産量は、2003年以降、50万トン(枝肉ベース)近辺で推移している(図表2)。しかし、内訳には大きな変化が生じており、上記の肉用牛種の中で価格の高い和牛の生産量が2003年の18.8万トン(全体構成比38%)から2023年では24.1万トン(同48%)に増加している。
図表2 肉用牛の生産量と和牛比率(和牛が肉用牛生産量に占める割合)の推移
和牛の生産比率が上昇している理由としては、出荷時の単価が交雑牛やホルスタイン牛よりも高いことが挙げられる。例えば、2024年7月の東京市場の平均卸売値(枝肉相場)をみると、和牛(去勢A-5:2,353円/kg)は、交雑牛(去勢B-3)の約1.5倍、ホルスタイン牛(去勢B-2)の2.3倍の価格差がある。ちなみに、2023年はホルスタインの雄(生乳を生産できないため、肉牛として取り扱われる)の子牛の価格は1,000円/kgでも買い手がつかないような相場も経験した。理由としては、飼料価格(生産コスト)が高騰していたことで販売価格の安いホルスタインを生産しても採算が合わず、肥育農家が子牛を仕入れなかった(需要が極端に減少した)ためである。
牛肉は、「歩留等級(A~C)」と「肉質等級(5~1)」を組み合わせた15段階で格付されており、歩留等級は枝肉から得られる部分肉の割合を評価し、部分肉歩留が標準より良いものはA、標準のものはB、標準より劣るものはCと判定される。また、肉質等級は、(1)脂肪交雑(サシ)、(2)肉の色沢(しきたく)、(3)肉の締まりおよび肌理(又はキメ)、(4)脂肪の色沢と質―の4項目を5段階で評価し、四つの項目中、最も低い等級が肉質等級として判定される。最近では和牛肥育の技術も向上してきており、2023年は、最高級のA-5ランクの占める割合が最も高く、約3割を占めた。前項で述べた通り、スケール化による効率化も進んでいるが、利益率(単価)の高い牛肉生産による効率化も進展している。
消費量については、高度経済成長期以降の食生活の変化に伴い、牛肉の一人当たり消費量は2000年までの30-40年で5倍以上に増加した。しかし、それ以降の牛肉の消費量は115~135万トンのレンジで推移し伸び悩んでいる。また、独立行政法人農畜産振興機構(以下「alic」と記載)によると、昨今、牛肉の家計消費(内食)は減少し、外食・中食への仕向け量が拡大しているという。また、牛肉は豚肉や鶏肉と比較して価格が高く、特に和牛はお盆や年末などの消費は堅調であるが、それ以外は動きが鈍く、牛肉の家計需要は少しずつ豚肉・鶏肉にシフトしつつあるという。
このように、生産現場では価格の高い和牛を生産する事業者が増加しており、経営の効率化、利益率の向上の観点から、今後も販売価格の高い和牛を生産する傾向に変化はなく、むしろ拡大させたい意向がある。その一方で、消費現場を見ると、今後も国内の牛肉消費の動向が劇的に変わることは考えにくいが、特に高級な和牛については消費する機会が限定的になりつつあり、需要が徐々に減少傾向にある。このことにより、国内の肉牛生産者と一般消費者の間には、徐々に需給ギャップが拡がりつつある。
2.国産牛肉の輸出拡大の可能性
前章で確認をした通り、生産現場と国内需要には需要と供給のギャップが生じおり、今後、事業拡大を企図する肉牛事業者の対象市場は海外が有望になると考えられる。日本は消費が低迷しかつ人口減少が進んでいるが、世界的には人口は増加しており、今後も増加を続ける見込みである。特に経済の成長に伴い、中間層も増加することが見込まれていることから、購買力も高まる海外は魅力的な市場になることが想定される。
今では海外においても日本の牛肉の認知度は高まっており、特に和牛に関しては、日本食が海外で受容されるのに伴い、アメリカや欧米、香港などをはじめとした国々において「WAGYU(和牛)」として、その認知度は向上している。農林水産省では2012年に「農林水産業・地域の活力創造プラン」において、2019年時点で農林水産物の輸出金額を1兆円と目標設定をしており、その中で、日本食品海外プロモーションセンター(JFOODO ジェイフードー)をJETRO内に創設している。当センターでは、SNSや動画等のデジタル広告、PRイベントの開催等現地でのプロモーションを実施しており、牛肉に関しては、「一過性に終わらない、継続的な日本和牛消費の維持・拡大」を目指し、ウェブサイト・SNS・動画を中心とした情報発信、店舗キャンペーンなどを通じ、現地の状況やニーズに即した施策を展開し、また、部位別の特徴を活かした料理提案を行い、日本和牛が様々なメニューやシーンで楽しめる食材であることを訴求している。
更に2020年には、食料・農業・農村基本法に基づき、国が中長期的に取り組むべき方針を定めた「食料・農業・農村基本計画」の中で、戦略的な開拓として農林水産物・食品の輸出を促進する旨を定めている。本計画の中では、輸出環境の整備や商流の構築、プロモーションの促進などの施策が盛り込まれており、それらを踏まえて、2030年までに5兆円の輸出金額目標を設定している。同年には、「農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略」において、各品目別に具体的な輸出戦略を掲げており、輸出拡大余地の大きい27品目を重点品目に選定し、品目ごとに課題を明確化しその対応に取り組んでいる。牛肉の輸出拡大に関しては、上記のJFOODOとの連携をさらに強めた消費者向け販促プロモーションの強化や、食肉処理施設の再編・改修など、様々な角度から各種課題の解決に取り組んでいる。
上記のような取組みなどが奏功し、牛肉の輸出額は順調に推移しており、2023年の牛肉の輸出金額は578億円まで増加している(図表3)。国は今後、牛肉輸出の更なる拡大を目指しており、2025年までに1,600億円(2023年比2.8倍)、2030年までに3,600億円(同6.2倍)を目標金額としており、更なる拡大に向けた取り組みが必要となる。
図表3 牛肉の輸出額の推移
3.国産牛肉の持続的な輸出拡大に向けた課題
日本産牛肉の輸出額は堅調に推移しているものの、国が掲げる長期目標(2030年までに3,600億円)の達成に向けた課題は大きく2つある。
まず、1つ目は、安定的な生産体制の確立である。今後拡大する海外マーケットを対象とする場合、海外事業者の需要に応じた出荷量の確保が求められる。一事業者当たりの大規模化は年々進んでいるが、生産規模を拡大するには事前に一定規模の資金調達が必要となる。具体的には、肉用牛を飼養するための牛舎の設置、敷地の確保、子牛の仕入れ、飼料の調達、人材の確保などが挙げられる。牛肥育においては、子牛の調達から成牛の出荷までに18~22カ月の期間を要するが、その期間は出荷ができないため、売上に伴うキャッシュインが得られない一方で、飼料や人件費などの運営費用はキャッシュアウトとして発生する。更に直近では円安の影響による飼料の高騰に加え、人件費、光熱費なども上昇しており、小規模生産者がその資金を調達し、すぐに大規模化を実践することは容易ではない。
もう1つの課題は、海外の多様化する商品ニーズへの対応である。例えば、日本産牛肉は、これまでは最も高価なA5ランクが好まれていたが、徐々に脂身の少ない肉質等級へのニーズも確認されはじめている。現に日本では、交雑種のブランドがいくつか台頭してきており、和牛と比較して価格は安いが、脂身を抑えながらも旨味のあるものとして人気がある。今後は海外でも同様にニーズが多様化することも想定され、このようなニーズを踏まえて生産を開始しても、出荷をするまでに、妊娠の期間から、出生、肥育の工程を含めると3年ほどの期間を要する。市場ニーズをいかに早く生産現場に反映させるかは、海外市場を拡大していく上では欠かせない重要なポイントとなる。
同様に、海外では輸出先の国によって需要のある部位が異なる。alicによると、2023年の部位別輸出量においては、柔らかくステーキに適した部位で比較的高価な「ロイン」が欧州(EU)、北米ともに約80%、赤身である「かた・うで・もも」では欧州12%、北米16%、「バラ」は欧州3%、北米7%となっている(図表4)。その一方、アジア向けでは「ロイン」が43%、「かた・うで・もも」は36%、「ばら」が18%となっている。2022年からの1年の間でも、「ロイン」の輸出量が減少し、「かた・うで・もも」の赤身類が増加しており、需要の変化がみられる。今後は国ごとの食文化によっても、牛の種類に加えて部位の需要が多様化する可能性も考えられる。
このように、持続的な輸出拡大に向けた主要課題としては、安定的な生産体制の確立と海外の多様化する商品ニーズへの対応が挙げられる。
図表4 牛肉輸出量の部位別割合(左:2022年、右:2023年)
4.国産牛肉の持続的輸出拡大に向けたポイントと先進事例
上記課題の解決にあたっては、自社の事業領域を超えて生産から輸出までのサプライチェーンを自社グループで内製化することが重要である。自社のみで必要な機能を構築することが困難な場合、もしくはスピード感を持った体制構築を進める場合には、M&Aや戦略提携を採る方法が考えられる。
上記を実践し、事業を拡大させている事業者に鹿児島県のカミチクグループと滋賀県の岡喜グループがある。カミチクグループは自社で生産から販売、輸出にかかるすべての事業領域を内製化することで事業を拡大させており、また、戦略パートナーとも連携した輸出事業の拡大に取り組んでいる。岡喜グループは、戦略パートナーと連携をしながら輸出事業に参入し、現地法人を設立したことで柔軟な経営を実践している。また、出荷量の不足を食肉センターと連携して補うことで、更なる輸出事業の拡大に取り組んでいる。以下、2社の先進事例を概述する。
(1)カミチクグループの取組み
鹿児島県のカミチクグループは、16のグループ会社を有する日本を代表する畜産事業者で、肉牛の生産事業、加工・卸事業、外食・小売事業、輸出事業など多岐にわたる事業を自社グループで展開している。当社は、1985年6月に有限会社上畜(現在の株式会社カミチク)を設立し、牛肥育から事業を開始している。一定規模の生産体制を確立したのち、M&A等を活用して、得意としている生産の強化に加え、川中、川下にあたる、加工・卸・外食・小売など様々な事業をスピーディーに展開してきたことで、マーケットの需要に柔軟に応えながら成長を続けている。輸出においては、2010年にタイ、マカオに輸出を始めたことをきっかけに2023年には台湾、香港、ベトナム,、アメリカなど様々な国で事業を展開している。
2017年に輸出を開始したベトナムに関しては、今後食肉需要が伸びるターゲット国の一つに位置づけており、2020年に高級焼肉店「WAGYU DINING USHINO KURA(和牛ダイニングうしのくら)」を出店している。また、2019年には、大手外食チェーンのワタミと業務提携し、合弁会社(ワタミカミチク株式会社)を設立の後、焼肉事業を展開している。その後、ワタミカミチクは海外へ進出し、カミチクは自社で生産した牛肉をワタミの海外店舗に納める連携体制で輸出に取り組んでいる。2023年には、「カミチク食肉輸出コンソーシアム」を設立し、鹿児島県内の26の生産者及びカミチクファームで生産された牛(和牛が中心)を鹿児島食肉センターでと畜し、カミチクが加工・輸出を行っている。海外拠点においては現地の人材を採用していることからも、現地で使いやすいカット規格に加工しており、また、カミチクのカット技術者も現地に派遣し、適切なカット方法、肉の取扱い方をレクチャーし、ロース以外の活用方法も提案するなど、現地のニーズに応じた輸出戦略を実践している。
また、カミチクはグローバル市場で日本の農業を強くするために、2008年にM&Aにより株式会社アンドワークスを取得。さらに、エサづくりから牛の生産・肥育・加工販売・外食・輸出まで一貫したバリューチェーンの構築を目的とする6次化事業体・株式会社ビースマイルプロジェクトを設立している。設立の目的のひとつに「海外への牛肉販売拡大」を掲げており、カミチクだけでなく、官民ファンド・金融機関・商社・飼料会社・食品メーカーなどの幅広い業種の企業と連携している。バリューチェーンのすべてを自らが主導して構築するカミチクの取り組みは、輸出拡大に向けた新しい動きと考えられる。
(2) 岡喜グループの取組み
滋賀県の岡喜グループは、肉牛生産を手掛ける株式会社岡喜牧場(以下「岡喜牧場」と記載)、国内卸・輸出を手掛ける株式会社オカキブラザーズ(以下、「オカキブラザーズ」と記載)、国内のレストラン・小売事業を行う株式会社岡喜商店(以下「岡喜商店」と記載)、またタイ現地にて卸売・レストラン事業を行うOKAKI Internationalなど複数社をグループに持つ。自社で日本三大和牛のひとつである近江牛を常時500頭ほど飼養しており、そこで生産された高品質な近江牛を自社で国内外に販売する6次産業事業者である。現在輸出国は米国、EU、シンガポール、タイ、フィリピン、マカオ、台湾、ミャンマーと多国に及び、自社で生産された近江牛以外にも滋賀食肉市場・京都食肉市場から調達した国産牛の輸出拡大にも取り組んでいる。
輸出をスタートしたのは2011年で、国内商社経由でシンガポール輸出のオファーがあったことをきっかけに、新規事業として立ち上げている。事業開始当初は現地の問屋への販売がメインであったが、想定した価格で販売できなかったことや特定部位のみに取引が集中するなど、思い通りの事業が展開できなかったため、自社で現地にて卸・レストラン事業ができる会社としてタイをメインターゲットとしたOKAKI Internationalを設立している。現地法人の設立にあたっては、現地のレストラン市場に長けた人材とともに拠点探しから行っており、現地のニーズを捉えた戦略構築ができている。
岡喜グループでは、自社で近江牛の生産、加工、流通すべてを手掛けていることから、ブランドストーリーを直接現地で伝えることで差別化に成功している。現在取り組んでいる米国への輸出に関しても「岡喜和牛」として自社ブランドの確立にも取り組んでおり、今後も事業拡大を見据えている。OKAKI Internationalのレストラン事業では、現地の富裕層をターゲットにし、現地のニーズを汲み取りながら、需要に対応した仕入を行っている。また、卸事業では、サーロインやヒレなどへの需要が旺盛であるため、余った他の部位についてはレストランにて加工などの工夫を行った上で提供できるよう、柔軟な輸出戦略を構築している。当初はパートナーともに輸出事業をスタートしながらも、自社で輸出事業を内製化することにより、市場の細かなニーズの汲み取り、無駄を省いた効率的な事業展開を実現している事例と言える。
日本産牛肉の輸出に取り組む先進事例を2社紹介したが、まず、カミチクグループの事例では、M&Aや異業種の事業者との提携等の活用により自社の領域を広げながら、戦略的パートナーと一緒に新たな事業に乗り出すなど、自社の有するノウハウを最大限に活かす戦略を採っている。これにより、多面的なアプローチで輸出事業の拡大を実現している。
また、岡喜グループの事例では、パートナー事業者との連携をきっかけに海外進出を行い、マーケットのニーズと自社の経営の方向性をうまく組み合わせて、外食事業などにも展開するなど、海外への輸出事業を拡大している。自社で現地での販売事業も内製化していることを活かして、「岡喜和牛」として利益率(単価)を高める戦略も採っている。更に今後は海外の需要量に対応するためにも、滋賀や京都の食肉市場とも連携を深めており、更なる輸出事業の拡大に取り組んでいる。
輸出事業を成功させるためには、生産から流通におけるバリューチェーンにおいて、その機能を直接・間接的に内製化することが重要となる。自社単独で内製化できる場合はそれが望ましいが、他領域に進出することは容易ではなく、費用や時間もかかり、ビジネスチャンスを逃すこともある。それらを解決するために、各機能をグループ内に取り込むことで直接的にその機能を内製化する、もしくは外部との提携により間接的に機能を内製化することが有効な手段となる。特に海外マーケットにおいては、文化や習慣も異っているため、ゼロから参入するよりも、ノウハウを持つパートナーと連携することで、スピード感のあるビジネス展開が期待できる。
海外では和牛の認知度、需要が高まってることから今後は市場の拡大が見込まれ、それに伴ってニーズの多様化にも対応する必要が生じてくることが想定される。輸出拡大においては生産から輸出に至るまでの機能を内製化することによって、市場のニーズに応えていくことが重要なポイントとなる。
おわりに
国内の肉牛事業者は輸出を行うにあたって、自社の不足する機能を補うことができるパートナーとの連携を行うことが成功のポイントであることは前述の通りである。連携にあたっては、どのようなパートナーと連携をするかが重要になる。例えば、肉牛生産者は生産技術にノウハウはあるが、加工や流通に関するノウハウや機能が不足しているケースが多い一方で、加工・流通業者は、肉用牛生産のノウハウや機能を有していないケースが多い。また生産された肉牛は出荷時に700㎏ほどに成長するため、長距離の輸送にはコストもかかる。そのため、と畜場や加工場、また輸出の際に利用する空港や港など立地についても考慮しながら効率的な流通網(コールドチェーン)を構築する必要がある。このような課題を網羅的に検討した上で、事業パートナーを選定することが重要になる。
輸出の拡大は副次的効果もある。海外での需要が高まることで、その影響は国内にも波及し、軟調な国内需給が引き締まり、国内牛肉価格の適度な上昇が期待される。生産者の所得が向上すれば担い手不足の課題解決にも寄与しよう。
本レビューで述べた課題はひとつの視点であり、実際に海外に輸出する際には、国ごとに異なる食肉の規制やアニマルウェルフェアへの対応、HACCP、各種手続きなど、様々な課題がある。このような様々な課題をクリアするには、国や自治体、各種関係機関とも密な協力・連携が必要になる。これらの課題を各事業者間で連携しながらクリアし、日本が誇れる和牛を世界に届ける輸出ビジネスが、日本農業の持続的な発展に貢献することを願う。
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