目次
・株価はファンダメンタルズに回帰
・米国経済指標の短期的な振れに一喜一憂しない
・米国主要企業は二桁増益へ
・中国政府の断続的な景気対策
・日本では緩やかな利上げならば受け入れられる
・日本株の評価が高まる余地は十分ある

株価はファンダメンタルズに回帰

米国S&P500指数は史上最高値の更新が続いています。我々は、株価はボラティリティー(変動率)の高い状況から、実体経済や企業業績などのファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)に沿うものに回帰するとみてきました。米国市場は、概ね良好な経済指標の発表が続く中で、このトレンドに戻ってきたとみます。日本市場は、ボラティリティーの低下に時間がかかっていますが、政治・経済の様々なイベントをこなしつつ、いずれこのトレンドに回帰するとみます。

米国経済指標の短期的な振れに一喜一憂しない

米国では時折り発表される弱い経済指標などにより、景気減速懸念が台頭する場面が散見されます。しかし、全体としては概ね良好な経済指標が続いており、実体経済はFOMCメンバーの見通しよりも、良好な状況にあるとみられます。港湾ストやハリケーンなどのかく乱要因はありますが、経済指標の発表における一時的な要因に一喜一憂する必要は無いでしょう。米国家計の債務や信用リスクの状況などから判断して、スパイラル的な景気悪化リスクは限定的です。利下げが進めば、住宅投資や消費が復調し、景気の下支えになると期待されます。

米国主要企業は二桁増益へ

米国市場参加者の金利観は、中長期では良好な経済環境が続くとの見方から、長期金利は安定化し、FRBの利下げにより短期金利は低下し、金利の正常化が進むとみられます。大統領・上下院議会選挙の結果によっては、経済政策の方針が変わることもあり得ますが、企業業績の拡大は変わらないとみます。2024年7-9月期は一時的に増益率が減速するものの、AIビジネスの拡大などが業績を支え、2025年にかけて主要企業は二桁増益が続くでしょう

中国政府の断続的な景気対策

ユーロ圏では景気下振れ懸念が強まっており、ECBは連続利下げへと利下げペースを加速させました。中国でも景気減速が強まっており、中国政府は、利下げや預金準備率の引き下げなどの金融緩和を含む、景気対策を断続的に発表しています

日本では緩やかな利上げならば受け入れられる

日本では輸出に中国の景気減速が影を落としているものの、インバウンド需要の拡大や企業の値上げによる収益性の改善などが進み、大企業の業況は概ね良好です。連合は、2025年の春闘に向けて、再び5%を上回る賃上げ方針を示しました。賃金上昇と物価の安定への信頼感が増せば、日銀による追加利上げが視野に入るとみられます。金融市場は2026年末にかけても政策金利は1%未満という緩やかな利上げを想定しています。長期金利を含めて金利上昇ペースが緩やかなものにとどまれば、景気の下押し圧力は限定的でしょう

日本株の評価が高まる余地は十分ある

総選挙の結果が注目されますが、石破首相は金融市場の関心の高い政策に配慮するよう、発言が変化しています。急激な円高が一服し、為替が企業業績の下方修正リスクとなる懸念は低下しています。主要企業の業績拡大は続いており、バリュエーション(株価に基づく企業価値評価)に割高感は無く、PBR(株価純資産倍率)やPER(株価収益率)の上昇余地は十分あります。野村證券は、2025年末の日経平均株価の予想を42,000円としています

投資戦略については、米国で良好な経済環境と業績拡大が続くならば、米主要株価指数の史上最高値更新は続くとみます。中国景気への懸念などはありますが、総選挙などのイベントを消化しつつ、日本株も主要企業の史上最高益更新への信頼感が高まれば、業績拡大の趨勢に回帰するとみます

(野村證券投資情報部 小髙 貴久)

※野村證券投資情報部「Nomura 21 Global 11月号」(発行日:2024年10月21日)「投資戦略の概要」より
※掲載している画像はイメージです。

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