先週は米国債金利の低下が加速し、長期金利は一時1.25%割れを試すまで低下した。ドル円相場のドライバーとなる米5年債利回りも0.75%割れと6月FOMC前の水準を下回って低下し、想定以上の円高ドル安となった。デルタ変異株の拡大への懸念が燻る中、先週初に公表された米ISMサービス業指数やグローバルPMIなどは景気回復ペース鈍化のリスクを示唆した。6月FOMCでのFRBのタカ派化は行き過ぎとの懸念が強まり、市場の利上げ見通しの再考が迫られていよう。先物市場では22年中の利上げ開始期待が後退している。中国人民銀行による預金準備率(RRR)引き下げもあり、先週金曜日には世界的な株価持ち直しが見られたが、短期的にはドル円及び主要クロス円の上値がやや重くなりそうだ。ドル円が高値更新を試すには少し時間が掛かるだろう。

 今週は13日(火)CPI、14日(水)パウエル議長議会証言、15日(木)地区連銀景況感指数、16日(金)小売統計、などの米国イベントを通じ、景気回復ペース鈍化やFRBの引き締めの行き過ぎへの警戒感が和らぐかが注目される。米CPIはコア指数が前月比+0.6%へと一段の減速が予想され、パウエル議長がインフレ加速は一時的との見解を再強調すれば、過度の引き締めへの懸念は和らごう。地区連銀景況指数での供給制約緩和のサインが確認されれば、市場心理は安定しそうだ。この場合、特にクロス円の下値リスク低下が期待できる。米国では14日(水)ベージュブック、16日(金)共通インフレ期待指数(CIE)にも注目しておきたい。中国でも15日(木)鉱工業生産などの月次統計が公表され、景況感にとって重要だ。

 16日(金)日銀金融政策会合では、原油価格高騰などを反映し、目先のインフレ見通しが上方修正されそうだ。ただし、東京で緊急事態宣言が再発令され、東京五輪も首都圏では無観客となり、目先の景気見通しには慎重さが増すだろう。日銀の緩和解除への慎重姿勢に対する円相場の短期的な反応は限定的だろうが、中長期的には徐々に円安圧力を強めると予想される。

※2021年7月12日発行「国際金融為替ウィークリー」より一部抜粋
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