※執筆時点 日本時間11月22日(金)12:00
今週:注目度の高い2社の決算に安心感
※11月15日(金)- 11月21日(木)4営業日の騰落
今週の米国株式市場では、主要株価3指数が上昇しました。週の前半はウクライナによるロシア領内への長距離ミサイル攻撃の影響などで上値の重い展開でしたが、週の後半はウォルマート(WMT)やエヌビディア(NVDA)の好決算を受けて上昇しました。
エヌビディア“好決算”の内訳
エヌビディアの決算では、2024年8-10月期実績と2025年11月-1月の売上高見通しがともに市場予想を上回りました。8-10月期売上高では主要セグメントのデータセンター部門は前年同月比+112%と大きく成長し、市場予想比でも+6%と高い期待に応えました。半導体市場では、オランダの半導体製造装置大手ASMLホールディング(米国預託証券のティッカーコードはASML)や半導体メーカ大手のインテル(INTC)など、決算発表で売上高などの主要項目が市場予想を下振れた企業もあっただけに、エヌビディア決算は市場に安心感を与えるものだったと言えます。出荷遅延が報じられていたデータセンター向け新製品のブラックウェルに関して2024年11月-2025年1月期に出荷が開始されるとの見通しが示されたことも市場に好感されました。
半導体決算の振り返り①:カテゴリで明暗
主要企業の発表が集中した7-9月期決算から最近発表されている8-10月期決算までを振り返ってみましょう。TSMC(米国預託証券のティッカーコードはTSM)による2024年の半導体市場見通し(メモリを除く)は前年比10%増と変わらず、設備投資計画も300億ドル強と従来のレンジ内に留まりました。先端ロジック半導体は生成AIを中心に2025年から2026年にかけて需要拡大が続く見通しです。一方、アナログ半導体・パワー半導体・MCU(いわゆる「マイコン」を指し、複数の半導体を集めた集積回路のこと)などの成熟プロセスで製造する製品群は需要低迷が継続しており、10-12月期には在庫調整が一段と深まる見通しです。パワー半導体最大手のインフィニオン(ドイツ、米国上場なし)は、2025年9月期ガイダンスで前期比若干の減収を計画し、24年10-12月期には前四半期比で18%の減収を見込んでいますが、その後は徐々に回復していくと想定されています。
半導体決算の振り返り②:中国向けの不透明感続く
セグメント別に加え、地域別の影響も半導体市場に影を落としています。野村では半導体製造装置の業績予想を中国向け売上を慎重な見通しに見直したことから下方修正しています。米国の中国に対する輸出規制強化が報じられたのは7月頃ですが、現時点でも詳細が公表されることなく、不透明感は長く続いています。短期的には規制の公表や各社業績への影響を見極める必要があるでしょう。
残る「トランプリスク」は地政学と関税
ウクライナによるロシア領へのミサイル発射で地政学的リスクが意識されています。このようなイベントによって深刻な地政学的リスクイベントに発展するかは不透明ですが、1990年以降の地政学リスクイベントのケースを踏まえると、仮に深刻化する場合の主要株価指数は、直後は株安となり、その後1-2ヶ月以内に反発する傾向があり、反転タイミングもまちまちです。「地政学的リスクを警戒」と説明するのは簡単ですが、そのリスクを運用成果に結び付けるのは難しく、中長期投資の中では不可避と割り切り、リスク管理を行いながら運用方針を堅持することが重要と考えます。トランプ次期政権の政策も基本的にはランダムイベント(確実に予測できないイベント)として扱うのが良いでしょう。
米国株水準の考え方
2025年末までの米国株に関して、野村では上昇基調を想定しています。2024年春以降の米国株は、EPS改善を主因として「業績相場」に移行しました。S&P500の7-9月期EPS(一株当たり利益)は前年比+7.8%と5四半期連続増益で着地しています。決算発表が一巡してリビジョン・インデックスが上向いている要因は、9月後半から米国のマクロサプライズが上向き、アナリストの売上高見通しが好転していることが想定されます。S&P500のEPSは2024年通期で242.3(前年比+5.3%)、2025年通期で272.5(前年比+12.5%)、2026年通期で302.8(前年比+11.1%)と300が視野に入ることが予想されています(ブルームバーグ予想、11/7時点)。PER(株価収益率)が現状の21~22倍から一段と拡大することは考えにくいですが、PER20倍でもEPS300でS&P500が6000台に定着する展望が見込まれます。
野村は「25年末のS&P500=6300」
以上の前提に基づき、野村ではS&P500見通しについて、足元の水準の切り上がりを反映し、2024年末予想を6000(レンジは5400~6600)へ引き上げています。2025年は、年前半には関税発動や利下げ停止への懸念が多く見られますが、年後半には法人減税の確度が高まり、楽観論が優勢になると見込まれます。その結果、2025年末のS&P500予想を6300(レンジは5600~7000)、2026年末を6500(レンジは5500~7500)と引き上げています。ハイリスク・ハイリターン型の展開を想定し、レンジも広めに設定しています。中期的にはEPS拡大が期待リターン(配当込みで年率+6~7%)並みの株式パフォーマンスをもたらすと予想しています。
来週の注目点
28日(木)はサンクスギビング(感謝祭)で休場となります。28日(木)夜から29日(金)にかけて、小売店による「ブラックフライデー」セールが行われます。年末商戦の状況を知る上で、現地調査や決済データが注目されます。ウォルマートは2025年1月期の売上高見通しを引き上げ、年末商戦は新学期セールやハロウィーンと同様に好調を見込むとコメントしています。小売各社で状況は異なりますが、個人消費の動向が注目されます。
その他、米国では、26日(火)に11月FOMC議事要旨、11月コンファレンスボード消費者信頼感指数、27日(水)に10月個人消費支出・所得統計、10月耐久財受注、29日(金)に11月シカゴ購買部協会PMIが発表されます。
(編集:野村證券投資情報部 デジタル・コンテンツ課)