目次
・株価の基本はファンダメンタルズ
・米国の利下げ幅は従来予想より縮小
・第2期トランプ政権の政策に注意
・米国主要企業は二桁増益へ
・中国は米国との通商問題が待ち受ける
・日本企業の業績拡大が続く
株価の基本はファンダメンタルズ
米国大統領選挙はトランプ前大統領が勝利しました。市場のボラティリティー(変動率)を示すVIX指数は、イベント通過で大きく低下しました。2025年にかけて、株式市場は実体経済や企業業績などのファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)に沿うものに回帰するとみます。トランプ次期政権の政策や日米金融政策判断など、様々な変化が予想されますが、実体経済が堅調であれば、日米で企業業績の最高益更新が続き、株価もその動きに沿って推移するでしょう。
米国の利下げ幅は従来予想より縮小
主要先進国・地域は、概ね巡航速度での成長が予想されています。米国年末商戦は、穏当な伸びが予想されています。一方、足元のインフレ関連の指標はやや強い傾向がみられ、トランプ次期政権の経済政策はインフレ的とみられており、2025年にかけてのFRBの利下げ幅は想定より縮まるとの見方が市場で強まっています。
第2期トランプ政権の政策に注意
米国大統領・上下院議会選挙の結果、2016年11月の選挙時同様、全てを共和党が支配する「トリプルレッド」となりました。2017年1月以降の第1期トランプ政権時は、2018年の中間選挙でトリプルレッドが崩れる前に、議会の承認が必要な大規模減税を成立させました。その後、国境の壁を巡る予算での対立から2018年12月に政府閉鎖が起きると、経済や株式市場は混乱しました。第2期トランプ政権も、減税は経済や株価の押し上げに寄与しますが、関税強化によるインフレ懸念が進む場合や、政治リスクが浮上する場合は、注意が必要でしょう。
米国主要企業は二桁増益へ
米国企業業績は堅調で、2024年7-9月期も大手テクノロジー企業を中心に業績の上方修正がみられました。生成AIへの投資は2025年も続き、更に業績拡大が様々な企業に広がりを見せることで、主要企業の二桁増益の確度が増すとみられます。
中国は米国との通商問題が待ち受ける
ユーロ圏では、景気下振れ懸念が強まりつつあり、ECBによる連続利下げが予想されています。中国では、利下げを含む景気対策が打ち出されたことで、株価が上昇していますが、2025年はトランプ次期政権との通商問題の拡大が懸念されます。
日本企業の業績拡大が続く
日本では、自動車メーカーの認証不正問題などで低迷していた生産が回復に向かうとみられます。高い賃上げ率が続くならば、経済と物価との好循環が続くとみられ、日本銀行は2024年12月にも追加利上げに踏み切る可能性があります。ただし、米ドル円相場は日本よりも米国の長期金利の上昇幅が大きいことから、円安・米ドル高が進みました。スピードの速い円安は物価上昇懸念を引き起こします。他方、為替介入への警戒感が強まりつつある点には、注意が必要でしょう。自民党・公明党の連立与党は、国民民主党と3党合意に至りました。2025年度予算成立までは年収の壁引き上げなどの政策実現に向けて、3党は国会運営で協力するとみられます。主要企業の業績拡大は続き、2025年度も主要企業の過去最高益の更新が続くでしょう。野村證券は、2025年末の日経平均株価の予想を42,000円としています。
投資戦略については、トランプ次期政権の政策決定過程で政治リスクが浮上する場合は、経済や株式市場に悪影響が及ぶとみられます。しかし、選挙で選ばれる統治者は、経済成長を重視するため、景気支援策も相応に見込まれます。結果的に、景気失速が無ければ企業業績は日米ともに堅調で、株価の下支えとなるでしょう。
(野村證券投資情報部 小髙 貴久)
※野村證券投資情報部「Nomura 21 Global 12月号」(発行日:2024年11月25日)「投資戦略の概要」より
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