※執筆時点 日本時間12月6日(金)12:00

今週:様子見ムードの中、ハイテク上昇

※11月29日(金)- 12月5日(木)4営業日の騰落

12月FOMC(連邦公開市場委員会)や雇用統計(注:執筆時点では未発表)を控え様子見ムードの中、情報技術関連の株価が上昇しました。背景には、発表された対中半導体規制が予想ほど厳しくなかったことや、セールスフォース(CRM)の2024年8-10月期決算において売上高が市場の予想を上回るなど、情報技術セクターへの安心感が広がったことがあります。

対中規制への警戒が和らぐ

2日(月)、米国商務省の産業安全保障局(BIS)が対中輸出規制の強化を発表しました。主な内容は、1) 中国の140社を規制対象企業リストに追加、2) HBM(広帯域メモリー/AI関連のデータセンターに多く使われる)への規制対象拡大、3) 24種類の製造装置の輸出禁止、4) 米国以外の国からの米国技術を使った装置の輸出禁止(ただし、日本などの同盟国からの出荷を除く)などです。中国の半導体製造のサプライチェーンから先端半導体の製造能力を制限することを目指しているとみられます。規制の内容は多岐にわたるものの、概ね事前予想の範囲内の内容であり、市場には安心感が広がりました。同日、製造装置大手のASMLホールディング(オランダ企業、米国ADRのティッカーコードはASML)は、2025年の売上計画に変更がないと発表しました。

トランプ次期政権の主要ポスト候補には対中強硬派が多いことから、今後も厳しい対中規制が発表されると注意が必要です。

WSTSが半導体市場の見通しを上方修正

3日(火)に、世界の主要半導体メーカーで構成される業界団体であるWSTS(世界半導体市場統計)が2024年秋季の半導体市場の見通しを発表しました。2024年と2025年の市場予想が前回(2024年6月)よりも上方修正されています。

(注)灰色は実績、薄い赤色は2024年6月時点、赤色は2024年12月時点のWSTS(世界半導体市場統計)による予想。
(出所)WSTS、LSEGより野村證券投資情報部作成

WSTSによれば、半導体需要が全体に低迷した2023年に対し、2024年はAI関連の投資が好調でメモリーやGPU(データセンターの論理計算などに使われる半導体)などのロジック製品が市場をけん引したと分析されています。2025年には、AI関連のデータセンター投資やAI機能搭載端末の増加が半導体の需要全体を押し上げ、ロジックやメモリー以外の半導体製品も前年比で成長することが期待されています。

(注)2024年、2025年は2024年12月時点のWSTSによる予想。
(出所)WSTS、LSEGより野村證券投資情報部作成

当面の注目点は半導体の製品別による成長・回復のバラつきです。特に自動車や製造業、PCやスマホで使われる半導体群は2024年には前年比マイナスと予想されています。WSTSでは2025年にはプラス成長が予想されていますが、用途別に底打ち時期は異なるとみられ、その時期を探ることが重要です。WSTSのようなセミマクロ統計に加え、個別企業の決算を確認していきたいと考えます。

来週の注目点は2点です。

来週①CPI発表、粘着質なインフレ続く公算

11日(水)に消費者物価指数(CPI)が発表されます。17日(火)-18日(水)に予定される12月のFOMCを前にFRB(米連邦準備理事会)高官は7日(土)から沈黙期間に入るため、政策判断の材料を求めてCPIの結に市場が大きく反応する可能性があり注視が必要です。11月のコアCPI(食料・エネルギーを除く)は前月比+0.3%と予想されています。前回10月に上昇要因となった家賃の減速が見込まれる一方で、ハリケーンによる外出控えや年末商戦の前倒しで価格低下が見られた衣類等での反動増が想定されます。依然としてコアCPIに高めの伸びが見込まれていることから、12月FOMCでの利下げ見送りやドット・チャート(金融政策の見通し)の前回(9月)からの上方修正の材料になり得ます。

来週②情報技術関連で重要な決算

12日(木)にブロードコム(AVGO)の8-10月期決算が予定されています。VMウェアの買収以来ソフトウェア企業の色彩も強めている企業ですが、通信半導体の大手でもあり、セクターへのインプリケーションとしてはセグメント別にみる必要があります。前回決算では半導体部門の売上高が市場予想を下回っており、実績・見通しともに注目が集まります。

ご参考:ブロードコム(AVGO)前回決算

また、9日(月)にはオラクル(ORCL)、11日(水)にはアドビ(ADBE)とソフトウェア企業の決算発表も予定されています。これらは9-11月期と、前述のブロードコム等から1ヶ月進んだ四半期が対象期間となります。多くの情報技術企業が集中する10-12月期決算の先行指標としても重要性が高く、とくにAIを活用したサービスの収益状況や経営陣のコメントを確認したいと考えます。

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