7月15日に発表された中国の4~6月期実質GDP(国内総生産)成長率は前年同期比で7.9%増と相対的な高水準が維持されている。新型コロナの影響を除去した、対2019年同期の2年複合成長率を見ると、1~3月期の5.0%増から5.5%増と景況感のモメンタムも小幅に加速したと見られる。

 ただし、昨年後半の底堅い経済成長には構造変化が起きている。代表的な工業製品の生産量の伸び率を見ると、昨年後半の中国経済の回復に寄与したのは、国内消費回復をけん引する家電や自動車、建設活動を表すセメント、主要輸出品のパソコン、資本財を代表する産業用ロボットであり、この順番で変化が顕著である。

 自動化への投資加速は新型コロナの影響もある。20年3月に機械工業情報研究院等が国内製造業企業679社を対象に行った新型コロナへの対応方法の調査では、4割近い企業が雇用の削減、生産工程の自動化を新型コロナによる不確実性の対処法として挙げていた。従って、自動化への投資は一種の構造的な変化になり、その底堅さも当面維持されやすいと考えられる。

 対照的に、消費の回復は緩慢である。ただし、中国人民銀行の4~6月期調査では、家計部門の消費性向が小幅に上昇した。中国のワクチンの接種は4月下旬以降加速し、足元総人口の半数が2回の接種を終え、9月頃に集団免疫を達成できる計算である。接種の普及と共に接触型サービスを中心に消費には回復余地があるだろう。

 一方で、建設活動の国内投資への寄与度が機械設備投資を下回る背景には、当局による不動産及び地方政府の債務に対する統制強化が挙げられる。20年8月から行われている不動産開発業者への負債比率引き下げ指導、21年3月以降の地方政府債務統制の強化が主な理由である。

(郭 穎)

※野村週報2021年7月26日号「経済データを読む」より

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