空飛ぶクルマは、海外では「eVTOL(電動垂直離着陸機)」と呼ばれ、航空機に分類されている。
主な特徴として3点が挙げられる。第1に、垂直離着陸の機能があるため滑走路が不要であり、小規模なインフラをベースに点から点への移動が可能である。
第2に、電動で飛行可能なため、ヘリコプターなどと比較して騒音を低減できる。部品点数や機体構造の簡素化により、整備費用も抑制可能と見られる。
第3に、自動操縦の機能を有している。電動のため自動操縦との親和性は高く、パイロットが不要になれば運航コストも低減できよう。
日本では2018年に、空飛ぶクルマの実現に向けて、経済産業省と国土交通省が合同で「空の移動革命に向けた官民協議会」を設立、空飛ぶクルマの実現に向けたロードマップを策定した。
このロードマップでは、空飛ぶクルマの23年からの事業開始を目標としている。事業開始に向けて、空飛ぶクルマの機体の開発に加え、機体の安全性の基準整備など制度や体制の整備が進められている。
実用化のステップとしては、モノの移動から始めて、地方での人の移動、都市での人の移動へと高度化する計画である。
空飛ぶクルマのビジネスイメージは、災害時には物資輸送、人員輸送が想定される。平時の事業利用では、荷物配送、観光、空港アクセスなどが想定されている。
国内の空飛ぶクルマのイベントとして、25年の大阪・関西万博では、会場への移動に活用する方向で検討が進められている。
空飛ぶクルマの機体は、BoeingやAirbusといった航空機メーカーに加え、国内外の多くのベンチャー企業も参画して開発が進められている。
日本のベンチャー企業では㈱SkyDrive、テトラ・アビエーション㈱など、海外のベンチャー企業ではドイツ、米国、中国などの企業が実用化へ向けて開発に取り組んでいる。各社の事業計画では、23~24年頃の実用化が目標とされている。
航空会社は、空飛ぶクルマを活用した旅客輸送サービスを開始する予定である。日本航空は、パートナー企業と連携して25年度に空飛ぶクルマを利用した事業化を計画している。
(田崎 僚)
※野村週報2021年7月26日号「新産業の潮流」より