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賃金と物価の好循環による社会の変化と新たな消費構造

日本は人口減少局面に突入

日本の総人口は今後、減少ペースが加速すると予想されます。戦後の高度経済成長期には、医療の進歩や生活水準の向上、戦後のベビーブームによる出生率の上昇などを受けて人口が急増したものの、1990年代以降は出生率の低下や晩婚化、女性の社会進出で人口減少局面に入りました。

国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、日本の総人口は2070年には8,700万人になるとしています。

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(注)2020年までの人口は総務省「国勢調査」「人口推計」、2025年以降は国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)」(出生中位(死亡中位)推計)。
(出所)総務省、国立社会保障・人口問題研究所、厚生労働省より野村證券投資情報部作成

各種資産の価値が上昇している

日本では、長期的な時間軸でみて人口減少への転換による総需要の減少が根底にあり、長きにわたるデフレ傾向から経済成長の低迷が続きました。この間、日銀の低金利政策が重なり、金利や資産からのリターンは、低い状態が継続していました。しかし、賃金と物価の好循環を背景として、日本国内の金利は、コロナ禍が一巡した2022年頃より上昇に転じています。近年のマンション価格の高騰や、2024年に日経平均株価が約34年ぶりに過去最高値を更新するなど、金利上昇とともに、各種資産の価値も上昇し始めています。

マンション発売価格上昇ペースが加速

金利や株価の上昇は、金融資産だけでなく不動産価格や人々の消費行動にも影響しています。金融資産や土地などの資産価格が上昇(下落)すると、家計が自らの消費を増加(減少)させる「資産効果」が起こります。首都圏のマンション市場動向をみると、2010年代半ば以降、マンション需要の増加や資材高などの影響を受け、坪当たり発売価格は上昇傾向が鮮明になってきました。所得や資産価値の上昇による家計の消費意欲の高まりや、将来の資産価値上昇を見込むマンション需要などから、首都圏で百貨店の高額消費が増え、巡り巡ってマンション価格も上昇が起きているとみられます。

(注)データは月次で、直近値は2024年10月。年率中古契約戸数のデータは、2001年3月から。
(出所)不動産経済研究所、公益財団法人 東日本不動産流通機構より野村證券投資情報部作成

富裕層の構造が多様化

資産効果に加えてパワーカップルと呼ばれる、共働きで高収入の夫婦や、パワーシングルと呼ばれる、高所得を得ている独身者の影響も大きくなっています。女性の社会進出が大きな要因です。

これまでの日本における富裕層は、一般的に年齢が高い層が多いとされてきました。しかし、近年の社会構造や経済の変化により、富裕層の構造が多様化しています。

女性の労働力率(15歳以上人口に占める労働力人口(就業者+完全失業者)の割合)は、結婚・出産期に当たる年代に一旦低下し、育児が落ち着いた時期に再び上昇するという、いわゆるM字カーブを描くことが知られています。しかし近年では、「男女雇用機会均等法」や「女性活躍推進法」などの施策もあり、M字の谷の部分が浅くなっています。

(出所)総務省より野村證券投資情報部作成

また、民間企業の階級別女性比率の推移では、女性の役職者の割合が、年々増加しています。

(注)民間企業の階級別女性比率の推移のカッコ内の数値は、2025年の政府目標。直近値は2023年。
(出所)厚生労働省より野村證券投資情報部作成

百貨店の稼ぐ力が高まる

家計が保有する金融資産や不動産の価値上昇に伴う資産効果に加え、女性の社会進出によって増加するパワーカップルやパワーシングルの影響で、富裕層が増加しています。この結果、高額商品を扱う百貨店の売上が好調です。

日本百貨店協会によると、店舗の統廃合が進んだことで、百貨店の売り場面積は2014年からの10年間で2割以上縮小しています。しかし、その一方で、店舗面積1㎡当たりの売上高は足元で増加しています。2024年1-10月時点の店舗当たり売上高は1㎡当たり約122万円と、コロナ禍前の2019年の約109万円を超え、2008年以降で過去最高となっています。

(注)データは年次で、実績値は2023年。2024年の百貨店売上高は、2024年1-10月の累計の売上高を単純平均し年額に換算している。売り場面積は、2023年までは各年末時点、2024年は10月末時点のものを使用している。
(出所)一般社団法人 日本百貨店協会より野村證券投資情報部作成

国内富裕層や外国人旅行者からの消費意欲を積極的に取り込むなどして、売り場面積を縮小しつつも、百貨店の稼ぐ力は高まっています。円安を背景とした免税売り上げや、足元の賃上げ、株高による資産効果を受けた消費意欲の高まりによる販売拡大により、百貨店の稼ぐ力が高まっています。

(野村證券投資情報部 寺田 絢子)

ご投資にあたっての注意点