
※画像はイメージです。
矢継ぎ早の米国大統領の施策・発言により、主要国・地域の株式市場は変動性の高い状況が続いています。今回は、2024年年初以降の主要国・地域の株式市場において、どのような評価軸が有効であったかについて、改めて確認することにしましょう。
【時価総額】‥全ての国・地域で時価総額は有力なファクター(大型株優位)であり続けています。米国では昨年後半に、多くのストラテジストが相対的に割高になった大型株を避け、中小型への投資を推奨しましたが、残念ながら目立った成果は出ていないようです。中小型株は大型株に比べ流動性や、情報量に格差があり、相当な割安感がないと、中小型株が優位に立つことはないと考えられます。なお、足元で米国・欧州は金利低下局面、日本は逆に金利上昇局面にあるわけですが、割引率(≒長期金利)の先行きが不透明/変動性が高い状態では、『割安/割高』の判断が困難な状況にあると考えられます。
時価総額ファクター(図表1)

※注記は図表4に集約
【ROE(株主資本利益率)/業績修正】‥時価総額にならんで、ROEや業績修正などの成長性、クォリティーに関するファクターも世界的に共通して有効性が持続しています。金利低下局面の国・地域では足元で割引率が高く、金利上昇局面にある国・地域では将来割引率の上昇が見込まれます。ともに、高い(高くなる)割引率に割り負けない成長性や業績モメンタムを投資家が好むものと考えられます。
ROEファクター(図表2)

※注記は図表4に集約
業績修正ファクター(図表3)

※注記は図表4に集約
【PER(株価収益率)】‥そうした中で唯一、日本のみで有効なファクターがPERファクターです。日本は、PERのファクター効果が2024年年初以来、主要国・先進国の中で、突出して高く、また累積ファクター効果が一度もマイナスになっていない唯一の国です。PERファクターは、業績後退局面などEPS(1株当たり利益)に対する信頼度が低下すると、ファクター効果が低下することがよく知られています。現在、日本企業の業績モメンタム(≒リビジョン・インデックス)は世界で最も強く、同時に幅広いセクターでリビジョン・インデックスが良好な状態にあります。そのため、PERが割安な企業を安心して物色できる環境が提供されている、と言えるでしょう。
PERファクター(図表4)

(注1)図表は、日本(MSCI-Japan)、米国(MSCI USA)、欧州(MSCI Europe)、Kokusai(MSCI 日本を除く先進国)の、時価総額、ROE、業績修正、PERの累積ファクター効果(2023年末=0)。データは月次で、直近値は2025年2月。
(注2)ファクター分析とは、銘柄母集団を指標の高低でグループ分けし、月初に上位20%の高スコアの銘柄群を買い/下位20%の低スコアの銘柄群を売った際の、月末までのパフォーマンス(リターンスプレッド)を計測するもの。
(出所)野村證券市場戦略リサーチ部などより野村證券投資情報部作成
以上より、米国大統領の交代によりファクターの有効性が大きく変わった例はなさそうです。日本では世界で唯一、背反する概念と捉えられがちなグロース的なファクターと、バリューファクターが両立していることが確認されました。現状では日本の株式市場は、投資家にもっとも優しい市場、と言えるかもしれません。