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2025年5月12日に開催された米中貿易協議でのサプライズ合意によって、両国間の無益な関税引き上げ競争には一旦歯止めが掛かりました。世界の株式市場は大幅上昇となり、米国をはじめ多くの市場では、4月前半に急落した株価下落分を取り戻しています。こうした中で、米中合意以降、やや上値の重い動きとなっているのが、東証REIT指数です。

もともと、東証REIT指数はコロナ・ショックによる急落後のリカバーが一巡した2021年7月以降、金利先高観が重石となり、中長期的な下落基調が続いていました。株式市場での生成AI関連株ブームを横目に見ながら、ここ数年は完全に相場の蚊帳の外に置かれてきた格好です。しかし、トランプ大統領の再登板と強権的な政策運営によって、金融市場で物価上昇と景気後退が同時進行する「スタグフレーション」懸念が強まったことで、2025年に入ってからはその業績面でのディフェンシブ性や相対的にインフレに強い特徴などに見直しの動きが出てきたようです。

東証REIT指数の値動きをチャート面から見てみましょう。下図は2021年1月以降の週足チャートです。前述したように、2021年7月高値形成後は、高値と安値を段階的に切り下げる教科書的な下降トレンドを形成してきました。下降トレンドを形成中は一時的な上昇局面が何度か見られましたが、いずれも下向きの52週移動平均線か、それを一旦上回っても52週線の少し上を通る下降トレンドラインに上値を押さえられてきたことが分かります。

東証REIT指数:週足(2021年~)

(注1)直近値は2025年5月27日。天底の数値は日次終値ベース。
(注2)トレンドラインには主観が入っておりますのでご留意ください。  
(出所)JPX総研より野村證券投資情報部作成

しかし、足元では、この「負けパターン」から抜け出したかに見えます。トランプ関税ショック後の上昇で、これまで上値を押さえられてきた52週線を上放れし、さらに2021年7月高値から続く下降トレンドラインを上抜けてきました。これまで4年近く続いてきた中長期下落相場が転換した可能性が考えられます。 

より長期的な値動きを振り返ると、2024年12月安値は、2021年7月高値から3年半が経過しており、2003年以降の主な下落局面の中で過去最長となっています。日柄面から見ても同安値で大底を形成した可能性は高いと言えます。この先、2024年8月高値(1,791ポイント)を超えて大底形成のシグナルの一つである逆三尊型のチャートパターンが完成すれば、2024年12月安値をボトムとした中長期の上昇トレンドに移行する展開が期待されます。足元のチャートが示唆するシグナルが、この先の大きな変化に繋がっていくか注目です。

テクニカル分析は過去の株価・為替等の値動きを分析・表現したものであり、将来の動きを保証するものではありません。また、記載内容は一般的に認識されている見方について記したものですが、チャートの見方には解釈の違いもあります。

ご投資にあたっての注意点