先週前半のドル円相場は一時108円70銭台まで円高ドル安が進むなど、上値の重い展開となった。しかし、金曜日公表の米雇用統計が市場予想を上回ったことを受け110円台を回復している。雇用者増加数が94.3万人増と100万人近い伸びを記録したことに加え、失業率も5.4%まで低下するなど、7月時点では労働市場の改善ペースに弾みが掛かり始めていたことが示唆される。FRBは11月 ないしは12月のFOMCでテーパリング開始を決定する可能性が引き続き高く、米国での金融政策正常化の先行がドル円相場を支えるだろう。短期的には、タカ派メンバーからの9月テーパリング開始決定を主張する声がどの程度大きくなるかも注目される。

 今週は11日(水)米CPIが重要指標となる。市場はコアCPI前月比の伸びが+0.4%に減速すると見込んでおり、仮に市場想定程度のインフレ率の減速が実現すれば、市場のリスク心理には好材料となる。雇用統計の強さとインフレの減速との組み合わせが実現すれば、テーパリング開始の遅れや利上げの前倒しなどの米金融政策に纏わる不透明感が後退し、クロス円を含めた緩やかな円安シナリオの確度が高まろう。ただし、米国では1日当たりの新型コロナ新規感染者数が10万人を再び上回っており、中国での新型コロナ感染拡大や当局による一部業種への締め付けとともに、世界経済にとってリスク材料として残る。

※2021年8月10日発行「国際金融為替ウィークリー」より一部抜粋
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