日産自動車(7201) 輸送用機器

構造改革で損益分岐点売上高が低下

 日米での新車不足や経営混乱に伴うブランド力の低下に新型コロナに伴う販売減少が加わり、2021.3期に2期連続で営業損失となった。構造改革のために不採算な地域への経営資源投入を縮小し、工場の閉鎖や稼働シフト数の削減により生産能力も大幅に削減した。固定資産の減損や従業員の早期退職、部品会社の補償など、21.3期までの2年間で8,144億円の特別損失を計上し、親会社株主損失は1.1兆円に達した。

 これらの構造改革を断行した結果、足元で固定費が2年前と比べ3,500億円以上減少しており、損益分岐点販売台数(持ち分法適用の中国合弁を含む)が19.3期の500万台から440万台以下に大幅に低下した。

北米で今秋から新車攻勢、EV にも強み

 中国を除く新興国で拡大路線を修正し、ここ数年、北米、中国、日本など当社が強みをもち、利益を上げやすい市場に開発資源を集中してきた。今秋から北米で多目的スポーツ車(SUV)やピックアップなど高収益な主力車種が相次いで全面改良し、販売増や値引き縮小で収益改善を見込む。

 当社は電気自動車(EV)のパイオニアとして、「リーフ」を世界で53万台以上販売し、バッテリー起因の重大事故が1つもないなど高い技術力を持つ。EV では、21年末にSUV「アリア」、22年4月には軽自動車を発売し、更なる拡大を目指す。業績のV 字回復やEV での強みを考慮すれば現状の株価は割安といえよう。

(桾本 将隆)

ピジョン(7956) その他製品

日本発の育児用品のトップメーカー

 1957年に哺乳器メーカーとして創業し、ベビー用スキンケアやベビーカー等も展開する育児用品の総合メーカー。哺乳瓶市場では国内シェア8割超、中国でもトップブランドとしての地位を確立している。

 約10年サイクルで機能強化を伴う新製品を投入しており、今年の秋に日本では11年ぶり(中国では10年ぶり)に主力商品である哺乳瓶・乳首「母乳実感」の新モデル投入が予定されている。新モデルの最大の特徴は、赤ちゃんが吸着・吸きゅうてつ啜・嚥えんげ下をより自然に行えるように、通常の製法では金型にくっついてしまうような柔らかいシリコン素材の刷新である。成長市場である中国で、最初に発売が計画されている。

少子化の中国でも成長余地は大きい

 中国では出生数減少傾向が続いてきたが、5月に3人目の出産を認める方針が、7月20日には産児制限の違反者に課している罰金(社会扶養費)廃止が発表され、中期的に出生数の減少傾向に歯止めがかかると見ている。当社の中国事業売上高は出生数の多寡に関わらず増収基調が続いており、産児制限の緩和は追い風になろう。

 哺乳器等新モデルは9月発表予定、中国では11月の恒例EC(電子商取引)イベントを梃子に市場浸透が見込まれる。国内ではおしり拭きのプレミアム品やベビーカー等の高価格・高採算品の投入が相次ぎ、活発な新商品投入で収益性向上と成長軌道への回帰が期待できよう。

(繁村 京一郎)

東京建物(8804) 不動産

「八重洲」で2 つの大型開発

 旧安田系の総合不動産会社。現在、「東京駅」駅前の八重洲一丁目東地区及び首都高速の地下化が計画される日本橋川の川沿いの八重洲一丁目北地区で大型再開発事業を予定している。いずれも、竣工は2025年以降の見通しである。

 20年から始めた5カ年の中期経営計画では、個人の実需向けのマンション分譲や、投資家への売却を目的に開発する商業ビル、ホテル、物流施設の売却が業績を牽引する計画である。

 新型コロナにより分譲マンションの売行きを懸念する局面もあったが、低金利と住宅取得支援税制と相まって、快適な住宅への住み替え需要は堅調に推移している。

不動産回転型事業の案件は多数

 中期経営計画期間は、不動産を開発して売却する回転型事業に注力することで、資本効率を高め、内部留保を積み上げ、大型再開発の資金需要に備えると見られる。

 21年6月時点で当社では、約790億円の売却益を想定する不動産開発案件を確保した。そのうち、物流施設について、当社が物流施設特化型の不動産ファンドを組成し、複数物件をまとめて売却する可能性も検討しているようである。

 野村では、マンション分譲と投資家向け物件売却が好調で21.12期の営業利益はピーク利益を更新すると予想する。また、不動産の含み益を考慮した資産価値から見て株価は割安と判断している。

(福島 大輔)

※野村週報2021年8月30日号「銘柄研究」より

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