総選挙で株高は再来するか

 10月14日、岸田首相は衆議院を解散し、総選挙の日程は10月19日公示、10月31日投開票で確定しました。選挙期間中、株式市場はどのような推移が見込まれるのでしょうか。過去のデータより、総選挙と日本株の関係について考えてみます。

 結論としては、過去、選挙期間中は株高という傾向がありました。1990年以降の衆院選10例を振り返ると、解散前日から投票直前までの約1ヶ月のTOPIXリターンは上昇が9例、下落が1例の9勝1敗でした。また、平均リターンは+3.6%となっています。特に、2005年以降の直近5例に絞ると、5勝0敗で、平均リターンは+6.4%という強い株高傾向が示されています。

 続いて、選挙期間中のリターンが高くなった例について詳細にみていきましょう。1990年以降の10例のうち、TOPIXリターンが10%前後と高水準だった3例は、与野党の支持率が拮抗した2005年と、支持率で与野党が逆転していた2009年、2012年となっています。

 当時の局面を振り返ってみます。2005年は小泉政権の「郵政解散」でした。郵政民営化を巡って自民党内の分裂が深刻となる中、小泉首相は解散総選挙によって党内の抵抗勢力を排除するという改革姿勢を国民にアピールし、選挙で圧勝しました。2009年は、リーマンショック後の経済環境の悪さと不祥事による大臣辞任が相次ぐ中で、国民および株式市場は野党(民主党)の政権運営に期待を高め、政権交代が実現しました。2012年は逆に、アベノミクスを掲げた自民党が民主党から政権奪回に成功しました。これら3例では、総選挙によって政治的不安定が打破されるとの期待感が大幅株高をもたらしたという点が共通していると言えるでしょう。

 岸田内閣発足直後の世論調査では、内閣支持率の回復が見られましたが、菅政権発足時と比較して支持率の回復は限定的となっています。しかし、主要野党との支持率には大きな差があり、菅前首相の辞任表明前後と比較すると政治的不透明感は低下しています。選挙戦が本格化に向かう中、世論調査や議席数予測などにも引き続き注目です。

 最後に、日本株セクターへの影響についてもみていきます。2005年以降の5例を振り返ると、セクターでは、自動車・輸送機、鉄鋼・非鉄、機械、電機・精密といった景気敏感な輸出業種に加え、金融(除く銀行)の相対パフォーマンスが高くなっています。総選挙は、景気敏感株の物色につながる傾向があったと言えそうです。

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