政府は太陽光の上積みを図る

 2021年10月4日に開催された第70回調達価格等算定委員会で資源エネルギー庁は、第6次エネルギー基本計画案における30年度の再生可能エネルギー(以下再エネ)発電の導入目標336~353TWh のうち24~41TWhは、もう一段の施策強化等が必要な野心的目標と位置付けた(表)。野村では、上記の野心的目標分を含めて非化石電源の拡大が難航すると見られる中、CO2排出量を削減するため、関西電力、九州電力が供給する低炭素電力へのニーズが高まると考えている。

 上記41TWhの内訳は、①系統増強等を通じた陸上、洋上風力発電の拡大により各々4TWh(出力2GW)、6TWh(同2GW)、②新築住宅へ太陽光発電を導入する施策強化により4TWh(同3.5GW)、③地熱、水力発電の施策強化により各々5TWh、5TWh、④地域共生型再エネ導入の推進により太陽光発電を中心に5TWh(同4.1GW)、⑤民間企業による太陽光発電の自家消費推進により12TWh(同10GW)。21年3月時点で太陽光発電の導入量は62GW と、第6次エネルギー基本計画案の103.5~117.6GW に対し53~60%の進捗である。20年度の住宅、非住宅向け導入量である0.76GW、5GWを継続できれば目標達成は可能だが、国土面積及び平地面積当たりの日本の太陽光発電導入量は主要国で最大となっており、上記導入量を10年間継続できるかは不透明であろう。21年3月時点の風力発電導入量は4.5GW、同23.6GWに対し19%の進捗にとどまる。なお、1TWh は10億kWh、1GWは100万kW(概ね原発1基分に相当)である。

(注)1. エネ基は、エネルギー基本計画の略。2. 第5 次エネ基の再エネ以外の電源別発電量は構成比から野村にて算定。3. 第6次エネ基案の再エネ電源別発電量・構成比は第70回調達価格等算定委員会資料(21年10月4 日)より引用。4. 風力18.3TWh、51TWhは、陸上16.1TWh、34TWhと洋上2.2TWh、17TWhの合計。5. TWhはテラワット時、1 TWh=10億KWh。
(出所)資源エネルギー庁資料より野村作成

電気料金が上昇する可能性

 20年度の再エネ発電促進賦課金2.98円/kWhは、家庭用、非家庭用電気料金の各々12%、16%に相当する。21年度のFIT(固定価格買取制度)に基づく買取費用は3.8兆円、同賦課金は2.7兆円(1kWh 当たり3.36円)と資源エネルギー庁は予想している。30年度目標の再エネ発電量は水力を除いて238~255TWh と、19年度の105.5TWh 比2.3~2.4倍へ拡大する計画である。太陽光などの発電費用の低下に伴って買取費用も減少する一方、洋上風力などの割高な発電量も増えるため、同賦課金も発電量に概ね沿って増加し電気料金が上昇する可能性がある。

 事業用太陽光発電のFITに基づく平均入札価格は、21年7~9月期で10.63円/ kWh(入札対象は出力250kW 以上)と、17年度の19.64円/ kWh(同2,000kW以上)の半分程度まで低下している。原油入着価格79米ドル/バレルに基づくLNG(液化天然ガス)燃料費10円/ kWh を若干上回る程度である。出力変動の調整費用を除けば、原油高に伴って太陽光発電の割高感は薄れていると推察する。政府の事業用太陽光発電のFIT 価格目標は25年度で7円/ kWh である。陸上風力の発電費用はFIT 開始以降10円台前半/ kWh と横ばい圏で推移している。

(注)1. エネ基は、エネルギー基本計画の略。2. 第5 次エネ基の再エネ以外の電源別発電量は構成比から野村にて算定。3. 第6次エネ基案の再エネ電源別発電量・構成比は第70回調達価格等算定委員会資料(21年10月4 日)より引用。4. 風力18.3TWh、51TWhは、陸上16.1TWh、34TWhと洋上2.2TWh、17TWhの合計。5. TWhはテラワット時、1 TWh=10億KWh。
(出所)資源エネルギー庁資料より野村作成

(松本 繁季)

※野村週報2021年10月18日号「産業界」より

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