日本たばこ産業(2914) 食料品

加熱式たばこPloom Xの競争力を評価

 日本市場において加熱式たばこは全体の約3割を占め、日本は加熱式たばこの先進国である。当社は紙巻たばこ市場では60%のシェアであるが、拡大する加熱式たばこ市場では当社のシェアは10%前後に留まる。当社製品は味への評価が高いが、吸い応えに課題があった。

 しかし、当社は2021年8月に新たな加熱式たばこPloom Xを全国展開し、当社の加熱式たばこのシェアが上昇に転じてきた。従来品より吸い応えが増し、競合品に対抗できる商品と評価する。Ploom X は、グローバルで一本化された研究開発部門が生み出した商品で、グループ内において製品開発ノウハウが蓄積されてきたと見る。

中期的な利益成長に自信

 22年から国内外のたばこ事業運営を一本化する計画である。日本などにおいてシェア奪取を目指しPloom Xへの投資を強化するだろうが、たばこ事業全体として利益成長を実現する意向である。国内は投資の増加で減益となるも、海外での単価上昇効果、人員・生産最適化に伴う固定費削減によりカバーし、22.12期の調整後営業利益(下記業績表の注を参照)は前期比4%増益を予想する。

 会社は7~9月期決算発表時に21.12期1株当たり配当金予想を10円引き上げ、140円とした。会社は今期を底に中期的な増配を目指すが、この発表は中期的な利益成長への自信の現れと見たい。

(藤原 悟史)

HOYA(7741) 精密機器

「小さな池の大きな魚」戦略を展開

 ライフケア分野では、メガネレンズ、内視鏡、眼内レンズなどの製造・販売、コンタクトレンズの小売を手掛ける。情報・通信分野では、半導体製造用マスクブランクス、FPD(フラットパネルディスプレイ)用フォトマスク、HDD(ハードディスクドライブ)用ガラス基板などを手掛ける。

 経営理念の中で「人・社会・自然の調和」「真に豊かな社会をつくる」を掲げる。世界規模で深刻さを増す近視問題への対応など、経営陣は環境・社会問題の解決を事業成長と一体的にとらえている。10年単位の視野に基づく事業領域の新陳代謝など、「小さな池の大きな魚」戦略に基づくグループ・ガバナンスにも注目したい。

高収益性を維持した成長が続く

 2022.3期の営業利益(通常の営業活動からの利益)は前期比21%増の1,990億円を予想する。先端半導体向けのEUV(極端紫外線リソグラフィ)ブランクスや、データセンター向けの3.5インチHDD 基板の売上の高成長が続いている。メガネレンズの市場も回復傾向にある。

 経営陣はニッチ市場での圧倒的な地位確保を強く志向しており、今後も高収益性を維持した成長が続くと考えられる。中期的にはマスクブランクスやHDD 基板を中心に情報・通信事業の成長が続こう。小児用近視進行抑制メガネレンズMiYOSMARTの拡販などから、ライフケア事業の着実な成長にも期待ができる。

(岡崎 優)

東日本旅客鉄道(9020) 陸運

JR各社の中でも不動産事業に強い

 1987年に旧国鉄から分割され発足し、2002年に政府の当社株売却で完全民営化された。首都圏が地盤の在来線と、東北地域を中心とした新幹線が収入基盤である。

 当社はJR 各社の中でも、鉄道以外の事業の拡大に注力してきた。従来の駅ビルを一新させた「ルミネ」、「アトレ」を展開、不動産開発では東京都心の駅開発に加え、品川車両基地の再開発が進む予定である。

 新型コロナ禍により落ち込んだ鉄道旅客は元には戻りにくいと見て、当社は費用削減や不動産の開発に力をいれる方針である。21年1月に発表した計画では26.3期に営業利益4,500億円と新型コロナ前並みの水準への回復を見込んでいる。

今後営業黒字化が定着しよう

 21年4~9月期は1,158億円の営業損失であったが、前年同期の2,952億円の営業損失からは改善した。ワクチン接種の進展と緊急事態宣言の解除により9月末以降に旅客回復が始まっており、買い物や通勤で利用する近距離収入を中心に回復が進む見込みである。

 野村では22.3期は不動産売却益の計上もあり、907億円の営業損失と下期での営業黒字化を予想する。また、旅客が新型コロナ後の定常状態となる24.3期には検討している通勤定期券での混雑時間帯での値上げやコスト削減の進展で営業利益は4,270億円と新型コロナ前に近い利益水準への回復を見込む。

(廣兼 賢治)

※野村週報2021年11月29日号「銘柄研究」より

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