財務省の貿易統計ベースの日本の10月の実質輸出(実質化と季節調整は野村による)は前月比+1.0%と増加に転じた。

9月に同-8.6%と大きく悪化したことを踏まえると、10月の輸出環境は正常化に向けて一歩前進したと評価できよう。

 実質輸出の内訳を財別に見ると、自動車輸出(前月比+13.4%)の増加が目立った。9月にかけて海外からの部品調達難による自動車減産の影響が輸出環境悪化の主因となっていたが、ようやく改善の兆しが見られた。他にも、一般機械(同+4.0%)や半導体等電子部品を含む電気機器(同+1.1%)なども増加に寄与した。

 ただ2021年10~12月期の実質輸出の持ち直しのペースは緩やかに留まる公算が大きい。自動車輸出を水準で見ると、直近で最悪となった9月に4~6月平均の55%程度まで落ち込んだ後、10月は同63%までの回復に留まっている。経済産業省が公表している製造業企業の生産見通しを集計した調査によれば、自動車輸出と関係性が深い輸送機械工業の生産水準について11月は前月比+22.2%(野村による実現率調整後計数)と大きく増加した後、12月は同-8.2%と再び減少に転じる見込みである。同業種の生産水準の伸び悩みは、輸出環境にとって重荷となろう。

 以上を踏まえ、前期からのゲタの関係上(9月は94.3と7~9月平均の100.1を大きく下回っているため、10月の95.3から11月以降も大きく回復して10~12月平均が100.1となっても、7~9月平均と同水準)、21年10~12月期の実質輸出は前期比+0.0%に留まると野村では予測している。自動車の挽回生産が実現すると見込まれる22年1~3月期には同+4.1%と大きく加速しよう。

(伊藤 勇輝)

※野村週報 2021年12月6・13日 合併号 「経済データを読む」より
(本年は最終号となり、次号は2022年1月17日より通常発行いたします。)

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