食品などを中心に足元で値上げを発表する企業が相次いでいます。値上げは各企業の利益増につながる可能性もあるため、株式市場の注目度が高いイベントの一つです。次に値上げが起きそうな商材やセクターは予測可能なのでしょうか。企業の価格転嫁のメカニズムを野村證券の伊藤高志シニア・ストラテジストが解説します。

価格決定方法のパターンの把握が重要

 一般的に、原材料価格や為替などの変動に起因する投入価格上昇の価格転嫁は、小売物価よりも生産者物価のほうが確実に行われる傾向があります。生産者物価の中では、素材は投入価格とほぼ連動して価格転嫁され、機械や自動車などの加工産品は2~3四半期のタイムラグを伴って価格転嫁されるのが一般的です。

 小売物価は、商品のモデルサイクルや、投入価格変動時の採算状況、企業ごとの商品戦略などにより価格改定に踏み切るタイミングは様々で、商材/商品レベルで普遍的に値上げの順番を正確に予測することは困難です。

 むしろ、小売物価/生産者物価ともに、価格の決定方法にはいくつかのパターンが存在しますので、品目ごとの値決め方法を把握することが重要です。

 主だった価格の決定方法を列挙しておくと、①市場が存在し日々値段が変化しているもの(鋼材、石油関連製品、生鮮食品など)、②定期的に価格交渉が行われるもの(自動車向けの鋼材など)、③決められた計算法によりきまるもの(電力料金など公共性の高い商品・サービス)、④生産者側が価格変更を宣言するもの(食品、家庭用品、段ボールなど)、⑤価格決定フォーミュラ(価格決定の方式など)が外部からはわかりにくいもの(多くのサービス価格)、などがあります。なお、ここに列挙した順番が早いほど、価格転嫁が行われるか/行われないかを部外者が推し量ることが容易と考えられます。

(伊藤 高志)

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