日米株価は年央まで上昇基調継続へ

 2022年は世界経済が新型コロナ危機から回復する2年目となろう。第一の理由はワクチンが引き続き有効であることである。オミクロン株という変異株が再び世界に広がり、接種したのに感染するブレークスルー感染も見られるが、ファイザー製ワクチンは3回目の接種でオミクロン株の感染も抑え込める、また重症化しにくいとの治験が示されている。また、mRNAワクチンは100日あれば新たな変異株に対応したワクチンの開発が可能なようである。

 第二の理由は経済対策の効果がなお期待できること。米国では金融政策は景気よりインフレ抑制重視に舵を切りつつあるが、家計の貯蓄率は政府による現金給付等のお陰でなお高く、インフラ投資も経済の下支え役を果たそう。欧州にはEU(欧州連合)復興基金による景気回復策がある。日本もコロナ危機で落ち込んだ景気回復のための大型景気対策が用意されている。

 野村の21年12月10日時点予想は、世界の実質GDP(国内総生産)成長率を22年:前年比+4.3%、23年:同+3.3%である。ただ、23年は潜在成長率並みの予想である点は認識しておく必要があろう。

 企業収益はどうか。米国では半導体、自動車の供給制約や戻りの鈍い労働参加率などから、インフレ率が予想外に高くなっているが、需要も強いので、価格転嫁は可能で企業収益の増加傾向は続こう。また日本も企業収益は順調である。ラッセル野村大型株(除く金融)で、22年度は前年度比10.4%経常増益(21年度予想同34.7%増益)予想である(21年12月1日現在)。

 グローバル製造業が世界的な財需要の強い回復と円安、企業努力等で好調なほか、非製造業も国内景気の回復を受け底打ちが期待される。悪かった空運、鉄道なども国内旅客需要の回復とリストラ効果で黒字化してこよう。

 日米株価はこうした収益増予想を背景に22年年央までは上昇基調を続けよう。ただ22年後半になると、23年の景気鈍化が意識されるようになるだろう。一方、FRB(米連邦準備制度理事会)の利上げ政策による米長期金利の上昇を受け、予想PER(株価収益率)が低下し株価は踊り場を迎えることが予想される。

自動車、ハイテク、運輸に注目

 それでは、日本株についてどういった投資アイディアが有効か、年前半を中心に考えてみよう。

 まず第1に注目したいのは自動車株である。22年度は半導体供給が正常化し、日系自動車メーカーの生産増、販売増が期待される。とりわけ、米国市場では小売販売が強くかつ在庫補填が必要なため、メーカー出荷は大幅増となり、円安傾向も加わり、日系メーカーの連結収益を押し上げよう。加えて、1回の充電で500~600km走るEV(電気自動車)の新型車が複数出てくる。欧州メーカーに比べEV 戦略が遅れているとの不安は払拭されよう。

 第2にハイテク株も引き続き注目される。とりわけ岸田政権の経済安全保障に立脚した思い切った半導体支援策が半導体関連株の息の長い上昇をもたらす可能性がある。具体的には、TSMC(台湾セミコンダクター)が日本に進出し、大規模な半導体工場を建設する。これにより、半導体製造装置、半導体材料のみならず、クリーンルーム、超純水装置などもメリットを受けよう。

 さらに、微細化が限界に達しつつある半導体メモリDRAM の後継として積層SRAMが有望視されているが、TSMCが日本の大学と共同開発している。これが実現し、量産へと進むとさらなる半導体投資が国内で行われる可能性に繋がろう。

 第3は空運、鉄道などの運輸株である。オミクロン株の行方次第ではあるが、感染状況が落ち着いていれば、22年春からGoToキャンペーンが再開されよう。国内の旅客需要が回復し稼働率の上昇から収益の好転、株価の回復が期待される。

 一方、年後半の踊り場局面では、景気に左右されない医薬・ヘルスケア、食品、情報通信株などが見直される可能性がある。新型コロナに対応した日本製ワクチンや治療薬、食品値上げ、株主還元策などに留意したい。

 最後に注意点は何か。1つは予想に反し、オミクロン株や新たな変異株の感染、重症化リスクが強くなり、経済の再開が制限されるリスク。2つ目は米利上げに伴う新興国株、新興国通貨の動揺リスク。特に、利上げ観測が強まる局面で注意する必要がありそうだ。3つ目は中国の不動産市場を巡る混乱が一段と深まり景気減速がより長期化するリスク。4つ目は年後半の円高リスクで、米利上げ開始後に円高、ドル安となる傾向のほか中間選挙にからむ米政治リスクなどがあろう。

(海津 政信)

※野村週報2022年新春号「投資の視点」より

ご投資にあたっての注意点