米国企業業績は2022年以降も拡大へ

 野村では、米国の実質GDP(国内総生産)成長率は、新型コロナウイルス(以下コロナ)感染拡大の影響の反動で、2021年は前年比+5.6%と予想している。22年は同+4.6%と引き続き潜在成長率を上回る高い成長率を予想するが、23年には同+1.9%と成長率鈍化を予想する。

 金融政策について野村では、FRB(米連邦準備理事会)は米国債等の資産購入の漸減、いわゆるテーパリングを22年3月に完了し、政策金利の引き上げは22年3月に開始されると予想する。しかし、FRBの主眼が金融政策の正常化で、インフレ抑制のための強い引き締めとならない限り、景気や株式市場への影響は限定的とみる。

 野村では、米10年国債利回りは米国経済が回復するのに伴い緩やかに上昇し、21年末は1.75%、22年末は1.95%、23年末は2.20%と予想する。この過程で一時的に急上昇することはあっても、それが定着するようなことはないとみている。

 次に企業業績であるが、調査会社リフィニティブによる21年12月10日時点の集計では、S&P500指数構成企業のEPS(1株当たり利益)は、21年は前年度比+47.7%の206.31ドル、22年は同+8.0%の222.85ドル、23年は同+9.5%の244.12ドルと予想されている。

 米国には独自の技術力やビジネスモデルでグローバルに競争力を発揮し、業容を拡大している企業が多い。コロナの影響から景気が回復し、拡大に向かう中で、21年以降、史上最高益を更新していくと予想されている。

 コロナは変異株の登場などで予断を許さない状況にある。しかし、先進国ではワクチンの接種が進み、新興国においても接種が進むことが期待される。加えて今後は、複数の製薬会社で開発が進む経口薬などの実用化が期待される。これらにより、コロナへの対応力が各国で高まり、経済活動の再開が本格化することが期待される。

 米中対立の激化やウクライナ情勢など、地政学的リスクには留意が必要だ。しかし、米長期金利の上昇が緩やかであれば、米企業業績の拡大を織り込み、米国株式市場は、22年を通せば緩やかながらも上昇基調となろう。

米国株式の投資アイディア

 前述の通り、米国株式市場は、22年を通せば上昇基調となると予想される。コロナ禍から脱することが視野に入れば、新型コロナの影響を強く受けていた、景気敏感業種の企業の株価が反発することは考えられる。ただし、人々のライフスタイルがコロナ以前の状態に戻るとは考えづらい。

 株価上昇の持続性という観点からは、景気敏感業種の株価反発よりも、技術力やビジネスモデルで競争力を発揮し、構造的に成長していくことが期待できる企業群の、中長期的な株価上昇の可能性に着目したい。

 米国株式の銘柄選別の視点としてはやはり、グローバルに競争力を発揮する情報技術や個人消費関連企業などを中心に選好したい。なお、中長期的には構造的に成長していくことが予想されるものの、今後の業容拡大に向けた研究開発や企業買収などに伴い、足元では一時的に業容の拡大が足踏みになっていた企業群も散見される。

 一つの分野としては、企業向けに営業力の強化や、業務効率を改善させるためのソフトウェアを展開する企業群に注目したい。売上高で世界最大のソフトウェア企業であるマイクロソフトや、顧客関係管理ソフトウェア大手のセールスフォース・ドットコム、インバウンドマーケティングという手法遂行のためのソフトウェアを提供するハブスポット、人工知能や機械学習を駆使して企業や人材に関する正確性の高い情報をユーザー企業に提供するズームインフォ・テクノロジーズなどを挙げたい。

 世界最大の検索エンジン「グーグル」を展開し、積極的に新技術に投資するアルファベットも挙げたい。

 カード決済ネットワーク企業にも着目したい。コロナ禍の影響で実店舗でのカード利用減少の影響を受けてきたが、コロナへの対応で、世界的に電子決済化の流れは加速している。同分野最大手のビザや、カード決済など既存事業の成長に加え、個人間送金や後払い決済など、新規事業の収益貢献が予想されるスクエアも挙げたい。

 長期間着実に増配を続ける優良企業も紹介したい。過去25年以上増配を継続している企業で構成される「S&P500配当貴族指数」採用で、かつNY ダウ指数の構成銘柄でもある企業は、シェブロン、スリーエム、キャタピラー、マクドナルド、プロクター・アンド・ギャンブル、コカ・コーラ、ウォルマート、ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス、ジョンソン・エンド・ジョンソン、IBM 等である。

(村山 誠)

※野村週報2022年新春号「米国株式市場」より

ご投資にあたっての注意点