高まるメタバースへの注目

 メタバースとは、人々が自分の分身となるキャラクターである「アバター」を介して交流しあう、インターネット上の仮想空間のことを指します。大ヒットした任天堂スイッチ用のゲーム「あつまれどうぶつの森」が一例で、同作ではゲーム内でアバター同士の交流が可能となっています。

 将来的には、各人のアバターが各仮想世界をまたいで活動できるプラットフォームの構築や、コンサート・買い物といった現実世界に近い体験の実現なども想定されており、メタバース市場拡大への期待が高まっています。

 メタバースへの注目が高まった理由としては、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の世界大手企業であるフェイスブックの社名変更が挙げられます。2021年10月、同社は自社事業がSNSからメタバースへと広がっているとして、社名をメタ・プラットフォームズへと変更し、大きな話題となりました。

 その他の背景としては、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)に代表されるXR(クロスリアリティ)関連技術が急速に進歩したことで、従来よりも仮想空間でのイベントを安価かつ高いリアリティーで体験可能になったことなども挙げられるでしょう。

メタバースでチャンスを掴む企業は?

 メタ・プラットフォームズ(旧フェイスブック)にとどまらず、大手テクノロジー企業のメタバースへの参入が相次いでいます。2021年11月にはマイクロソフトが同社のコミュニケーションツールである「チームズ」をメタバースへと拡張すると発表しました。同サービス内でユーザーはアバターを利用してビデオ会議に参加でき、会議も仮想空間上で行っているかのように再現できるようになるとのことです。

 メタバースを支えるXR技術を扱う企業にも事業機会が広がっています。ソニーグループ(6758)はPlayStation 4の周辺機器として「PlayStation VR」を発売しており、現行のVRハードとしては、メタ・プラットフォームズの「オキュラス」に次ぐ市場2位の地位を誇っています。VRで使用されるVRペンではワコム(6727)がプロトタイプを開発中です。VR/ARで用いられるヘッドマウントディスプレイは先端ディスプレイ技術が活用できるため、ソニーグループやセイコーエプソン(6724)などが採用拡大を狙っています。

 今後、XR技術の進化に伴い、大量のセンサーやアクチュエーターも必要になると考えられます。また、これらの製造装置への需要拡大も期待できるでしょう。関連企業としては、近年企業買収によってセンサー事業を強化したTDK(6762)や、半導体製造装置メーカーのディスコ(6146)東京精密(7729)などが挙げられます。

 その他、広告業界にも影響がありそうです。各企業はメタバースのスペース内に広告を打つなど、マーケティング目的でメタバースを活用することも可能です。このような観点では、広告の製作や配信の請負、スペースを広告枠と捉えて売買を促進する広告代理店などが恩恵を受ける可能性がありそうです。関連企業として、博報堂DYホールディングス(2433)はメタバースにおける新しい広告サービスの開発を開始しています。

(注)2021年12月27日時点の情報を基に作成

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