2022年は、岸田政権が本格稼働する最初の年となります。ここでは、日本株市場に影響を与える可能性のある、「デジタル化」や「地方創生」、「経済安全保障」、「分配政策」といった政権の産業政策テーマとその関連銘柄に注目してみます。

岸田政権のデジタル化とは?

 岸田政権が重視する「デジタル化」の具体策については、ローカル5Gやデータセンター活用など既に複数の計画が立ち上がっています。特に強調している分野としては、日本を周回する海底ケーブル敷設によるデジタルインフラの強靭化が挙げられます。岸田首相は所信表明演説で、デジタル化推進策のなかでも海底ケーブル敷設にのみ「3年程度で完成」と具体的なスケジュールを明らかにするなど意欲を見せていました。大陸間をまたぐ海底ケーブルの敷設計画は既に複数が立ち上がっており、政策による業績インパクトはある程度織り込み済みという見方もありますが、今後、テーマとして注目度が高まる可能性もあります。野村證券アナリストによると、海底ケーブル用の光ファイバーを製造する住友電気工業(5802)古河電気工業(5801)などが関連銘柄として挙げられます。

「新しい資本主義」では地方創生に注目

 政権が掲げる「デジタル田園都市国家構想」はデジタル化を通じた地方活性化が狙いであり、地方創生政策と一体化しています。岸田首相は「新しい資本主義」についても、所信表明の中で「主役は地方だ」と強調しています。2022年7月には参院選を控えていることもあり、地方創生については具体化が先行しやすい環境とみられます。今後、インフラ系企業や金融機関などがICT(情報通信技術)の活用によるワーケーション(観光地やリゾート地で働くという過ごし方)の推進や、農業の高度化、観光資源の開発および宣伝を軸として、地方創生に取り組む可能性があるでしょう。TOPIX500の構成銘柄において直近の有価証券報告書で「地方創生」や「地域活性化」への言及がある時価総額上位銘柄には、日本電信電話(9432)KDDI(9433)富士通(6702)ゆうちょ銀行(7182)などが挙げられます。

政策支援の追い風が期待できる半導体産業

 デジタル化に加えて「経済安全保障」の点でも重視される分野に半導体があります。政府は2021年度の補正予算案で先端半導体の生産企業を支援する基金の財源として6,000億円ほどを計上しています。報道では、TSMCの熊本工場に約4,000億円、マイクロン・テクノロジーとキオクシアホールディングスなどを候補に約2,000億円を支給し、半導体工場の新増設を支援する意向と伝えられています。なお、TSMCは同工場で製造する半導体をソニーグループ(6758)デンソー(6902)向けなどに供給するとされています。野村證券アナリストは関連銘柄として、トヨタ自動車との関係が深い半導体製造装置大手の東京精密(7729)、高付加価値なDRAM用プローブカード(半導体の不良を検査する装置に使用する製品)でマイクロン・テクノロジーに納入実績がある日本電子材料(6855)、車載用パワーデバイス向けの製造装置の拡販に注力しているアルバック(6728)などを挙げています。

企業側の賃上げ気運は低いか?

 分配政策の目玉となる「賃上げ」については、早期実現は見込みにくい状況となっています。賃上げ税制は拡充されたものの、経団連は2022年春闘での賃上げ目標の設定を見送るなど、企業側が慎重な姿勢を崩していないためです。仮に賃上げが実現した場合、企業にとっては、直接的には雇用コスト増大による収益押し下げ、間接的には家計の購買力改善によって内需系企業を中心に収益押し上げの影響があると考えられます。野村證券ストラテジストは、国内消費拡大の恩恵を受けやすい内需セクターに加え、空運業が賃上げの追い風を受けやすいと分析しています。

ご投資にあたっての注意点