
株主優待というと、自社製品や商品券等が送られてくるイメージだが、近年では仮想通貨やデジタルギフトがもらえる「デジタル型」や、優待品を受け取る代わりに寄付をしたり、災害被災地の特産品の詰め合わせを優待品にする「社会貢献型」が登場する等、内容が多様化している。
社会貢献型の優待では、例えば優待内容の選択肢に社会貢献活動への寄付を設けている企業なら、「寄付」を選択すると優待相当額が企業を通じて子供の貧困支援や地球環境保全等に取り組むNPO(非営利団体)や社会貢献団体等に寄付される。また、社会貢献型のギフトカードを株主優待に導入している企業もある。カードの額面や使用金額に応じて一定額が寄付される仕組みで、株主はギフトカードを受け取る、または使用すると同時に寄付をすることになる。優待を受ける権利を行使することで、社会貢献に参加できる格好となっている。
ところで、海外投資家のように優待を使える機会が少ない投資家にとって、株主優待制度のメリットは小さく、不公平な制度との声も聞かれる。利用できない物等は、受け取りを辞退したり処分する等、株主優待が使われずに無駄になるケースも多い。しかし最近ではこのような優待品を廃棄せずに、寄付をして社会貢献に活かす動きが出ている。
証券業界でも、株主優待を社会貢献に活かす取り組みが始まっている。日本証券業協会は2019年4月に「株主優待SDGs基金」を設置した。この基金は、株主優待等を利用して社会的な課題に取り組む者を支援し、SDGs(持続可能な開発目標)の達成に資することを目的としている。その原資となるのは、①証券業協会の会員等(証券会社等)が社会貢献型の株主優待を実施することにより同基金に寄付した金銭、②会員等が上場会社の株主である場合に当該上場会社から取得した株主優待品を換金して得た金銭、となる。集められた資金をSDGsの達成に寄与すると認められる機関に拠出し、SDGs を推進する。
株式投資は、株主優待を通じて社会貢献に参加する手段にもなり得る。この先、社会貢献型の株主優待制度のさらなる拡大や、優待品を社会に活かす活動が広がることを期待したい。
(投資情報部 谷 晶子)
※野村週報 2022年1月31日号「投資の参考」より