機械学習(Machine Learning、以下ML)のモデル作成を自動化するAutoML サービスに注目したい。

 MLは人工知能(以下、AI)の一種であり、作成したモデルで未知の事象に対して予測と判断を行う技術である。ML モデルは、データに潜むパターンや特性をコンピューターに学習させることで構築される。近年、ML 導入機運が高まった背景には、クラウドコンピューティング技術の発展が挙げられる。高度かつ膨大な計算処理ができるIT(情報技術)インフラに、インターネットを介してアクセス可能になったことで、ML モデル開発の環境は整った。

 一方、ML モデルの作成は、データサイエンスとプログラミングの知見を持った、希少な「AI人材」にしかできない。また、実用に耐え得るモデルを作るには数カ月の検証期間を要する。人材の制約と時間コストがあるため、ビジネス現場でのML の活用は未だに一部企業に限られている。

 こうした問題に対する解決策として、大手クラウドベンダーを中心に提供され始めたのがAutoML サービスである。ML 活用の裾野拡大のために、クラウドベンダーが支援ツール提供にも乗り出したと言える。AutoML は、ML モデルの構築に必要な作業を自動化する。AI人材でなくても、クラウドにデータをアップロードすれば、自動的に専門家と遜色ないモデルが作れる。AutoML サービスを使用することで、数カ月はかかったモデル構築が数日に短縮できるため、企業はML 活用の時間コストを大幅に削減できる。また、自社の業務に即したML モデルの内製化も可能になる。

 ただ、ML モデルの精度を維持するためには、作成後も監視と改良を加える必要がある。そのため、データがどのようにモデルの精度に寄与したかを理解する必要があり、AutoML サービスを使ったとしても多少のML の知識は必要になる。

 そこで、近年はベンチャー企業を中心にAI活用のハードルを下げる動きが活発化している。中でも、データとモデルの関係をわかりやすく、視覚的に説明するAutoMLサービスが世界の注目を浴びている。このように、遠くない未来に、誰でもAIを活用できる時代が到来すると考える。日本の「AI民主化」を可能にする新サービスに今後も期待したい。

 (清河 徳宇)

※野村週報2021年2月22日号「新産業の潮流」より

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