2月24日にウクライナ紛争が勃発し、資源価格上昇やサプライチェーン(供給網)の乱れなど、企業業績への影響が懸念される。しかし、その後の業績修正を確認すると、結論として、業績下方修正は限定的である。

 具体的に業績修正動向を確認しよう。ラッセル野村大型株の19業種について、2022年入り後に行われた22年度の経常利益の修正率/額を、2月24日を境に紛争前、紛争勃発後に分けてみる。

 紛争前は、21年度第3四半期(主に21年10~12月期)決算発表を踏まえ、それまでの資源価格上昇を背景に、商社や鉄鋼・非鉄などの素材業種の業績上方修正が目立った。一方、サプライチェーンの問題解消が遅れていることから、自動車や機械などの製造加工業種は下方修正された。全体では2.2%の業績上方修正となった。

 紛争勃発後、景気への不透明感から日本株を含めて主要国の株価は大きく調整した。しかし、紛争勃発後の企業業績の下方修正は-0.3%と限定的である。

 通信は投資事業を営むソフトバンクグループが含まれるため、それを除けば事実上、上方修正は維持されている。他は、主に内需系は上方修正され、製造加工業は引き続きサプライチェーンの問題があるものの、下方修正は小幅に留まっている。

 日経平均株価は3月下旬に28,000円台を付け、ウクライナ紛争勃発前の株価水準を大きく超えている。今後、資源価格上昇のコスト負担などが遅れて発現する可能性もあろう。しかし、ウクライナ紛争が主要国の経済・企業業績に与える影響が実は限定的との理解が進めば、業績相場に回帰する素地があると言えよう。

(投資情報部 小髙 貴久)

※野村週報 2022年4月11日号「投資の参考」より

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