金融市場では、景気悪化とインフレ高進が同時進行するスタグフレーションへの懸念が高まっています。スタグフレーション下では、グロース色の強いソフトウェア株が有利という見方もありますが、本当でしょうか。野村證券の伊藤高志シニア・ストラテジストが解説します。
ソフトウェア株以外でも注目されるセクターがでてくる可能性
過去、『長期間にわたるスタグフレーション』の実例として、大多数の人が合意できるのは、第1~2次オイルショックくらいかと思われます。当時は、『グロース色の強いソフトウェア株』というものは存在しなかったと思いますので、スタグフレーション下でグロース色の強いソフトウェア株が強い、というのは思考実験の結果と考えます。
おそらく、①コスト構造からエネルギーを中心としたモノの価格上昇の影響を受けにくく、そもそも②成長力が高く多少の需要鈍化の影響は長期的に見れば緩和される、という条件を満たしたセクターとして挙げられているのでしょう。もしこの条件が今回に当てはまるのであれば、ソフトウェアセクター以外でも注目されるセクターがでてくる可能性があります。
ただ、短~中期的には株価に影響の大きい、リスクフリーレートが急上昇する可能性が高く、その間はグロースイメージが強くバリュエーションの高いセクターは不安定な展開が続くことを覚悟する必要もあるでしょう。
なお、今回例として挙げたオイルショック時には、エネルギー価格の高止まりをうけて、エネルギー寡消費型の車や家電製品に需要がシフトし、日本企業がその恩恵に浴しました。スタグフレーション圧力の長期化はこうした需要の断層的な変化をもたらす可能性もあります。
(野村證券投資情報部 伊藤高志)