”セルインメイ”は4月までの年初来リターンが高い時に有効

4月までの株価リターンが高いほど”セルインメイ”になりやすい傾向

 株式市場の格言として知られる”セルインメイ”の季節が近づいてきた。“セルインメイ”は、1~5月にかけて株式市場が上昇しやすい一方で、6月以降は軟調に推移しやすい季節性を踏まえた格言である。ただし、過去を振り返ると、日本株市場において”セルインメイ”は利益確定売りの形で表れやすい傾向はあるが、必ずしも5月にTOPIXが下落するわけではなかった。(図表1)では4月末時点の年初来TOPIXリターンと5月の月間TOPIXリターンを比較した。両者には負の相関関係があり、4月末時点の年初来リターンが高いほど、5月のリターンが悪化しやすかった。

(図表1)TOPIXの4月末時点の年初来リターンと5月の月間リターンの関係

(注)02~21年を対象。
(出所)東京証券取引所より野村作成

4月までの株価リターンが高いほど海外投資家は5月に売り越しやすい

 日本株の値動きに影響が大きい海外投資家の売買動向はどうか。過去20年間を振り返り、4月末時点の年初来TOPIXリターンが(1)+5%以上、(2)-5%~+5%、(3)-5%未満、の3つのケースに分類した(図表2)。(1)のケースでは7年のうちで、海外投資家が5月に売り越しとなったのが現物で5回、先物で6回あり、(2)及び(3)のケース(13年のうち現物が5回、先物が4回)と比べて売り越しになる頻度が高かった。海外投資家の売買動向において利益確定売り目的の”セルインメイ”が生じやすい傾向が読み取れる。

(図表2)4月末時点の年初来TOPIXリターンと5月の海外投資家売買動向

(出所)東京証券取引所、大阪取引所より野村作成

今年は”セルインメイ”に対する過度な懸念は不要

 4月7日時点のTOPIXの年初来リターンは-3.5%である。上記の考察を踏まえると”セルインメイ”が更に株価を下押しする事態は、現時点では考えにくいだろう。

(市場戦略リサーチ部 藤 直也)

※2022年4月15日発行:日本株投資戦略(4月号) – 3章「需給動向:Sell in Mayの条件」より。

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