本日の株式概況:日経平均株価、約1,200円の下落

  • 25日の米国株式市場では、週間の新規失業保険申請件数の結果が市場予想を下回る良好な結果だったことに加え、2020年10-12月期の実質GDP改定値が速報値から上方修正されるなど経済指標は良好でしたが、米国10年債利回りが急上昇したことを嫌気し主要3指数は揃って下落しました。
  • 米国株安を受け、日経平均株価は、前日比414円安の29,753円で取引を開始しました。寄り前に1月の鉱工業生産指数速報値が発表され、前月比4.2%上昇と市場予想を上回りましたが、相場への影響は限定的でした。米国でフィラデルフィア半導体株指数が下落していたことから、東京市場でも半導体関連株の下落が目立ち、指数を押し下げました。
  • また米軍がシリア東部で親イラン武装勢力の施設に対して空爆を実施したと伝わったことも株価の重しとなりました。米国株先物やアジア株式市場が軟調に推移していたことを受け、日経平均株価は下げ幅を広げ、結局、前日比1,202円安の28,966円の安値引けとなりました。
  • 1,200円以上下落するのは、2016年6月24日以来です。他方、日本10年国債利回りは5年1ヶ月ぶりに一時0.175%まで上昇する場面もありました。

日経平均株価が歴代10位の下げ幅を記録、企業業績は好調で早晩落ち着きを取り戻すと予想

 昨夜、米国10年債利回りは一時1.6%台まで上昇し、これを嫌気して米国株式市場はハイテクセクターを中心に大幅安となりました。日本株式市場にもその流れが波及し、日経平均株価は1,200円を超える値下がりとなり、本日の終値は28,966円と2月5日ぶりに29,000円台を割り込みました。1,202円安は歴代10番目の値下がり幅となっています。

 足元の米国金利上昇の背景には、財政拡張やワクチン普及に伴う経済正常化への期待が、量的緩和の縮小による金融政策の正常化への思惑につながり、それを急速に織り込む動きへと発展していることが挙げられます。目先は、3月と想定される米国の追加経済対策の決定やインフラ投資計画の公表など、景気を後押しする政策の発表が見込まれます。

 短期的には、引き続き長期金利の変動で株価の値動きが大きくなる場面もあると考えられます。ただし、景気拡大局面における金利上昇自体は自然な動きであり、中央銀行が景気引き締めを意図した利上げ時を除き、金利上昇自体が経済や企業業績を失速させることは、ほぼあり得ません。景気拡大への期待が引き起こした金利上昇が景気を悪化させることになるならば、金利上昇自体の市場の反応の是非が問われかねません。

 日経平均株価が1,000円以上下落したのは、2020年3月13日に1,128円の急落を記録した時以来となります。この時は、前日にS&P500指数が終値で9.5%安、ダウ平均は10%安と、共に1987年の「ブラックマンデー」以来の大幅な下落率を記録し、FRBが大量に資金供給を行い、市場を救済しようと対応しました。当日13日に米国では、トランプ大統領(当時)が国家非常事態宣言を宣言しました。この時、景気は真っ逆さまに落ち込む途中でしたが、今は真逆に、世界経済は回復・拡大局面にあります。

 それを上回る下落幅は、2016年6月24日に当時日本の取引時間中に英国国民投票の結果が明らかとなり、EU離脱が現実となった時です。この日、日経平均株価は1,286円の下落となりました。本日、米国の長期金利上昇以外で世界経済を見渡して、それほどの衝撃を与え得る材料が出ているかというと疑問です。

 日米企業の業績は、製造業やテクノロジー企業を中心に増益への好転が明確になっています。足元の経済環境の不透明感を鑑みれば、各国中央銀行による緩和的な金融政策への姿勢も変わらないでしょう。株式市場は早晩落ち着きを取り戻すと考えています。

(滝沢 弘量)

本日発表予定の海外経済指標等

  • 米国 1月 個人消費支出(前月比:%)
      前月:-0.2 予想:2.5
  • 同個人所得(前月比:%)
      前月:0.6 予想:9.5

(注)経済指標などの市場予想はブルームバーグによる市場コンセンサス予想。時間は日本時間。
(出所)東京証券取引所等より野村證券投資情報部作成

ご投資にあたっての注意点