アドバンテスト(6857) 電気機器

テスタの世界最大手

 半導体製造工程でLSI(大規模集積回路)の最終試験に使用するテスタで、世界シェアは約40~50%、2021年は世界シェアトップ、20年は2位。

 1990年代以降、メモリ(記憶素子)用テスタでは、一貫して世界シェアトップを維持、圧倒的な競争力を誇っている。

 一方、ロジック(演算素子)テスタでは、90年代、2000年代とも果敢な新製品攻勢にも関わらず海外メーカーの牙城を切り崩すには至らなかったが、11年に競合のVerigyを買収してシェアを上げた。

 18年に、米中貿易摩擦によって、中国の半導体メーカーが米国製テスタを敬遠した結果、当社のシェアが躍進した。

多彩な事業機会に恵まれる

 空前の半導体設備投資の盛り上がりを受け、22年3月期の業績は、売上高が4,169億円(前期比33.3%増収)、営業利益が1,147億円(同62.2%増益)と大幅増収増益となった。受注高は同2.1倍の7,003億円で、いずれも過去最高となった。

 会社は23.3期も、テスタ市場の拡大と、前期比大幅増収増益を計画している。

 野村では、業績好調の背景には、①急速なEV(電気自動車)化による車載用半導体市場の拡大、②パッケージの高度化に伴うテスト工程の複雑化、③スマートフォンへのAI(人工知能)の搭載などがあると考え、今後とも当社は相対的に高い業績成長を遂げると考える。

(エクイティ・リサーチ部 和田木 哲哉)

日本瓦斯(8174) 小売業

原料高でも増益基調を継続へ

 関東圏を中心にLPG(液化石油ガス)・都市ガス・電気を販売。ICT(情報通信技術)、DX(デジタルトランスフォーメーション)を積極導入し、デジタル化を志向。

 電力・都市ガス会社では燃・原料高の料金転嫁が難航すると見られる中、当社では原料価格の大幅上昇をLPG 料金へ転嫁可能で、原料高による営業利益下振れリスクが相対的に低いと考える。LPGには電力・都市ガスのような燃・原料費調整制度がなく、原料高の料金転嫁が上限価格に制限されるリスクはない。LPG顧客増、電気とのセット販売、販管費抑制に加え、プラットフォーム事業の拡大により、中長期的な営業利益の成長と株主還元の拡大を見込む。

株主目線の経営を実践

 電力・ガスセクターでは、最も株主目線の経営を実践。総還元性向100%の方針を掲げ株主還元に積極的で、資本コストを意識し過剰な資本は持たない方針。政策保有株の縮減を完了し、議決権行使を通じて経営に緊張感を持たせている。経営が株主と同じ船に乗る報酬制度とし、各年度の利益計画の達成やフリーキャッシュフローの創出、ROE(自己資本利益率)及びROIC(投下資本利益率)の改善を強く意識し、2025.3期にROE20%を目指す。

 05年6月に代表取締役社長就任の和田眞治氏が22年5月に代表権のない取締役会長となり、柏谷邦彦氏が代表取締役社長へ就任し、新体制をスタート。

(エクイティ・リサーチ部 松本 繁季)

商船三井(9104) 海運

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日本海運大手の一角

 住友と三井グループの海運会社を源流とする。事業は鉄鉱石等の資源を運ぶドライバルク船、タンカー、自動車船、LNG(液化天然ガス)船や海洋資源開発、31%出資するONE(Ocean Network Express)社によるコンテナ船事業と多岐に渡る。

 2000年代にはドライバルク市況が高騰する中で利益が拡大したが、10年代は金融危機後の船の供給過剰に苦しみ、不採算船の処理を進めつつ、市況の影響を受けない中長期契約の獲得に力を入れてきた。

 20年以降はONEの利益が急拡大している。コロナ禍を経てモノの需要が急拡大、半導体不足など生産混乱も影響し、コンテナ船の運賃が上昇したためである。

23年3 月期も高水準の利益を維持

 22年3月期はコンテナ運賃の上昇が続き、ONEの利益拡大が四半期ごとに拡大したことで、当社経常利益が前期比5.4倍の7,218億円と過去最高益を更新した。22年1月以降にコンテナ船の運賃はアジア欧州航路で軟化傾向にあるが、アジア北米航路の運賃は高水準を維持している。

 23年3月期は、コンテナ船の運賃が緩やかに落ちていくものの、ONEが高い利益を確保できるとみて、当社経常利益を6,170億円と会社計画の5,250億円を上回ると予想する。23年3月期予想基準の株価純資産倍率は0.8倍と低位で、財務の改善も進むことから投資魅力は高いだろう。

(エクイティ・リサーチ部 廣兼 賢治)

※野村週報2022年5月23日号「銘柄研究」より

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