2022年4月の実質輸出(財務省貿易統計ベース。実質化と季節調整は野村による。)は前月比-4.0%と、3月の同+0.6%から減少に転じた。足元の輸出は悪化している。

 4月の実質輸出を国別に見ると、中国向け輸出が前月比-9.1%と大幅に悪化したほか、米国向け(同-2.2%)やEU(欧州連合)向け(同-1.4%)も減少した。

 加えて、制裁対象となっているロシア向け輸出は同-47.4%と、3月(同-40.8%)に続き大幅に減少した。本格的な制裁強化の直前にあたる2月以降、ロシア向けの輸出規模は4分の1程度まで縮小している。

 中国向け輸出の減少に関しては、同国内におけるロックダウン(都市封鎖)の影響により、生産活動や物流が停滞していることが主因と考えられる。

 4月の実質輸出の内訳を品目別に見ると、化学製品(前月比-8.9%)や電気機器(同-4.5%)、一般機械(同-4.0%)などが前月比減少に大きく寄与した。一方、自動車輸出(同+3.4%)は増加に転じた。供給制約の影響が緩和してきていることが背景として考えられる。ただ、中国国内のロックダウンが再び供給制約を生じさせていることから、目先で自動車輸出には減少圧力が加わる可能性が高い。実際、5月の国内新車販売台数(野村による季節調整値)は同-19.6%と大きく減少した。

 中国国内のロックダウンの影響から、22年4~6月期の輸出は大きく下押しされる可能性が高い。GDP(国内総生産)ベースの財貨・サービス輸出は、前期比-2.8%の減少になると野村では予想している。供給制約の緩和に伴い、その後の輸出は回復に向かうと考えられるが、世界的なインフレ高進が海外景気の減速を通じて日本の輸出を下振れさせるリスクに注意が必要である。

(経済調査部 伊藤 勇輝)

※ 野村週報2022年6月20日号「経済データを読む」より

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