ESG指数の5年間のパフォーマンスはS&P500指数を上回った

 ESG投資が注目されていますが、そのパフォーマンスはどうなっているのでしょうか?図表1は、2017年6月1日を100として指数化した米国ESG指数とS&P500指数の比較です。主要な米国ESG指数であるMSCI USA エクステンデッド ESG セレクト指数は、主要米国大型株指数であるS&P500 指数をアウトパフォームしています。現在の両指数の構成銘柄は似通っていますが、現在SEC(米国証券取引委員会)が進めているESG情報開示が施行され、企業の横並び比較が可能となれば、より違いが鮮明になることが予想されます。

(図表1)米国ESG指数とS&P500指数の推移比較

(注)直近値は2022年6月10日時点。
(出所)リフィニティブより野村證券投資情報部作成

ESGファンドへの資金流入の継続が推察される

 株価の上昇には資金流入が非常に重要ですが、図表2は、ESG関連株価ETFの口数の推移を表しています。図表1のESG指数に連動する、代表的なアイ・シェアーズ ESGアウェアMSCI米国ETFで見ると2019年頃から順調に口数が増えているのがわかります。ETF以外のESGファンドも含めて資金流入が推定できます。

(図表2)ESG関連米国ETFの口数残高の推移

(注1)iシェアーズ ESGアウェアMSCI米国ETF。
(注2)データは日次で、直近値は2022年6月13日時点。
(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成

 2022年5月には、世界のリーダーの意識共有の場であるダボス会議でも、ESG指標と開示、報告についての議論がなされました。実は、ESG投資は個人投資家というよりは、年金を意識しています。年金の受給者は個人なので、20代から60歳過ぎまで、年金の運用機関の投資年限は長ければ40年、実際には期限がない、とコメントしている運用機関もあります。この場合、投資先の企業や、社会そのものの存続が重要になることは感覚的にも理解できると思います。また、年金資産の運用総額は、全世界で56兆ドル、7000兆円を超える規模です。年金運用機関は、この規模を利用して、受給者や社会をよくするための、社会的責任投資を行うことで、企業が行うESGを後押しし、社会の持続可能性を高めます。
 ESGを推進している企業の株やグリーン債に投資するESGファンドの運用額は2.7兆ドルに達し、さらに増加傾向にあることがダボス会議ではコメントされました。ステークホルダーである受給者にとって、年金の投資年限は長ければ40年あるいは期限なしと考えられ、投資先企業や社会の存続が重要です。約56兆ドル(OECD調査、2020年)ある世界の年金資産の活用方法や投資先が見直される局面といえそうです。

(野村證券投資情報部 竹綱 宏行)

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