建設工事費デフレーターと建築着工統計とは

 建設工事費デフレーターでは、建設にかかる費用の動きを示しています。建設工事にかかる費用には、働く人の賃金や社会保険料などの「労務費」、セメントや鉄などの「資材費」、運送や金融などの「サービス料」などが含まれています。また、建築着工面積は、建築物の量をその面積で測った統計です。「着工」段階の統計になるため、工事進捗前の状況を先行的に把握することができます。統計の対象としては、住宅やマンションなどの居住施設や、工場や商業施設などの非居住用の建設までを広く網羅し、延べ床面積10平方メートル以上のものが計上されています。

(注1)データは月次で、建設工事費デフレーター及び建築着工面積の直近値は2022年5月。
(注2)建築着工面積は建築着工統計のうち、着工建築物総計の季節調整済みの値で、データは月次の3ヶ月後方移動平均。
(出所)国土交通省より野村證券投資情報部作成

着工面積は低水準、建設費用は上昇傾向が続く

 建築着工面積は、バブル崩壊以降の建設不況により、減少傾向が続いてきました。耐震強度偽装事件を受けて建築審査を厳しくした改正建築基準法が2007年6月に施行される前後では、短期的に大きな着工の増減がありました。2008年にかけて(その後2008年9月にリーマンショック)や2011年3月の東日本大震災後の復興需要期など、建設工事のコストの上昇局面では、その後に建築着工が手控えられる動きがみられます。2020年の東京オリンピックにかけての建設需要一巡やコロナ禍により、2020年前後の建築着工も低迷しました。建築着工面積は総じて伸び悩んでいますが、デフレーター上昇の背景には単価の高い工事が増えているということもありそうです。また、短期的には資材価格上昇の勢いは強く、インフレの影響には注意が必要でしょう。

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