個人投資家にとって、避けては通れないのが「税金」のこと。素朴な疑問を、大手町トラストの折原税理士に聞きました。

1. はじめに

 国税庁は、全国の国税局が強制調査(査察)し、2021年度に処理(検察庁への告発の可否を判断)した件数が103件、脱税総額が102億1,200万円であったと公表しました。このうち、検察庁に告発したのは75件、 60億7,400万円でした。これは、40~50年前の半分にも達しません。今回は、査察の動向について、説明します。

2. 査察事件の動向

  査察制度は、悪質な脱税者に対して刑事責任を追及し、その一罰百戒の効果を通じて、適正・公平な課税の実現と申告納税制度の維持に資することを目的としています。

3. 査察結果の要点

・2021年度の着手件数は、前年度とほぼ同じですが、40~50年前に比べると半分以下に減少しています。

・2021年度に検察庁に告発した件数は前年度に比べ8件少ない75件。告発した脱税額は前年度を8億円超下回る60億7,400万円となり、1972年の統計開始以来最少で、3年連続過去最少を更新しました。

・税目別の告発件数では、75件中、法人税が43件で最も多く、消費税21件、所得税9件、源泉所得税2件の順となっています。

・告発が多かった上位3業種は、建設業、不動産業、卸売業で、建設業と不動産業は2015年度から7年連続で上位2業種を占めています。

・2021年度においては、消費税事案、無申告事案、国際事案、時流に即した事案などの社会的波及効果が高いと見込まれる事案を重点事案として積極的に取り組んだとのことです。国税庁公表資料「令和3年度査察の概要」には、架空の課税仕入れを計上した消費税の不正受還付事案、海外法人を利用した国際的な不正スキーム事案など9事案が紹介されています。

4. むすびに

 以上のように、最近の査察件数は、件数、脱税額とも大幅な減少になっています。これは、一見、悪質な脱税者が減少しているようにも見えますが、他方、他の情報では海外取引等を利用した脱税が増加しており、脱税まがいの租税回避が巧妙化しているようです。今後、査察当局がどのように対応するのか注目する必要があります。

※本解説は令和4年4月に施行されている法律等に基づき作成しております。個別の税務の詳細については、税務署や税理士等にご相談ください。

ご投資にあたっての注意点