アパレル業界が、廃棄問題の解消に向けた取り組みを強化している。

 2022年1月、フランスにおいて、世界で初めて衣料品の廃棄を禁じる法律が施行された。20年2月に公布された循環経済法の一環で定められたもので、企業に、売れ残った衣料品を廃棄(焼却や埋め立て)することを禁じ、リサイクルや寄付を義務付けた。違反企業に対しては、最大1万5,000ユーロの罰金が課される。

 自主規制も進んでいる。世界の大手アパレル企業112社が署名する「ファッション業界気候行動憲章」や、国内のアパレル企業50社が加盟する「ジャパンサステナブルファッションアライアンス」が、カーボンニュートラル(温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすること)や衣料品の廃棄量削減に向けた取り組みを進めている。

 このような中、商品在庫を持たない完全受注生産のブランドや、受注生産の支援サービス、無駄な仕入れを抑制する在庫分析SaaS(インターネット上でソフトウェアの機能を提供するサービス)、アウトレットモール、衣料品リサイクル・アップサイクル(創造的再利用)のサービスなどに注目が集まっている。

 例えば、アップサイクルの事例では、ワークスタジオの「PANECO」がある。PANECOは廃棄予定だった衣料品を集めて作られた繊維ボードである。家具や間仕切り、雑貨など、木材の代替品として様々な場面で活用されている。

 需要に見合った適量生産をすることも必要である。フルカイテンが提供する在庫分析SaaS「FULL KAITEN」は、実売データをAI(人工知能)で分析し、追加発注のタイミングや、値引きの時期や幅の最適化を提案する。「追加発注の最小化」と「欠品による機会損失の抑制」の両立を目指す。

 また、ウィファブリックのアウトレットモール「SMASELL」には約1,200社、2,500以上のブランドが出品している。購入分のCO2削減量の可視化や、注文毎の森林保全団体への寄付で、ユーザーの環境問題の意識を高めることにも貢献している。

 アパレル業界における廃棄問題の解消には、企業努力だけなく、消費者の理解も不可欠である。消費者がサステナブル(持続可能)な商品を価値と捉え、選択するという行動変容が必要であろう。

(フロンティア・リサーチ部 杉本 佳美)

※野村週報 2022年9月26日号「新産業の潮流」より

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