仮想空間であるメタバースを、広告メディアとして活用する動きに注目したい。

 メタバースは、ユーザーが自身の分身であるアバターを操作し、他のユーザーとコミュニケーションを楽しむインターネット上の3次元仮想空間である。情報技術の向上に伴い、ベンチャー企業を含め、メタバースを提供する事業者が増え始めている。

 メタバースが盛り上がる中、メタバース内で広告を出稿する取組みも始まっている。メタバース内の建物や立て看板などに、企業の商品ポスターや動画を掲載する仕組みである。また、メタバース内に企業の特設スペースを作り、商品やサービスのPR イベントを開催し、実際に購入できるようにする事例もある。

 静止画や動画で提供される従来のインターネット広告に比べ、3次元仮想空間で提供されるメタバース広告は、臨場感にあふれ、印象に残りやすい。また、リアル空間のように広告枠の制約を受けない。リアル広告とインターネット広告のメリットを兼ね備えた広告メディアといえる。

 企業がメタバース広告への取組みを急ぐのは、若年層へリーチするための新たな広告メディアとして期待が高まっているためである。メタバースは、インターネットに慣れ親しんでいる若年層の利用が多く、今後一段と利用時間の増加が予想されている。また、メタバース広告は、従来のインターネット広告よりも多様な情報を収集できる。アバターの行動を捕捉できれば、ユーザーの興味・関心を把握したり、広告の改善策の検討にも繋がると期待される。

 メタバース広告を事業拡大の決め手と捉えるメタバース事業者は多い。メタバース内のアイテム課金だけでは利幅が薄いため、広告収入が収益源として期待されている。広告収入で安定収益を確保できれば、より大規模で没入感のあるメタバースの開発に資金を投資できると考えられる。

 市場拡大をにらみ、大手広告代理店も動き始めている。博報堂DY ホールディングスの子会社は米国のメタバース事業者の「ロブロックス」の広告枠販売を始めた。電通も、メタバースでのイベント企画やメタバースに適した店舗設計とプロモーション方法の支援を始めている。

 メタバースの活用領域として、今後は広告の展開にも期待したい。

(フロンティア・リサーチ部 清河 徳宇)

※野村週報 2022年10月3日号「新産業の潮流」より

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